19日夜、熊本市中央区のアーケード街。地震の影響で多くの店がシャッターを閉める中、横の通りに入ると「営業中」の紙が張られた店を見つけた。「ラフテー」や「オリオンビール」などの見慣れたメニューの立て看板の店は、宮古島市出身の砂川大輔さん(37)=熊本市中央区=が営む居酒屋「島うた大ちゃん」だ。

「復興のためには街を明るくしないと」と語る砂川大輔さん=19日、熊本市中央区下通・居酒屋「島うた大ちゃん」

 居酒屋を開いたのは約10年前。東京の沖縄料理店で経験を積み、独立を目指して、妻の美希さん(36)の故郷・熊本に来た。

 14日夜、店でモズク天ぷらを揚げている時だった。突然の激震で鍋が倒れ、左手と右足に油がかかりやけどを負った。痛みに耐えながら調理場を飛び出し、店内にいた約30人の客の無事を確認したが、「みんな青ざめた顔で、すぐ会計して帰った」と振り返る。

 翌朝、急いで向かった市内の病院は被災者であふれ返っていた。諦めて自宅で軟こうを塗って応急処置をし、15日も店を開けた。

 「活気ある街の店が全部閉まったら駄目だよ。街を明るくして熊本を元気にするのが俺らの仕事」と砂川さん。「沖縄は台風でもお店開けるでしょ。『何かやってあげないと』って気持ちだね」と語る。

 独立当初、つらいこともたくさんあったが、同業者の仲間から「頑張れ」と励まされた。親身になって支えてくれた熊本の人たちへの「恩返しにもなればと思っている」。

 16日は未明の本震で断水したため閉めたが、その日以外は営業を続ける。平日の来客数は1日40人ほどだが、本震後の17、18の両日は70人ほどが訪れ、普段より忙しい。

 取材で訪れた19日午後8時ごろは、店はほぼ満席。客足が落ち着くのを待ち、話を聞けたのは午後11時すぎ。「復興の1丁目1番地は街を明るくすること」と砂川さんは声を弾ませた。(社会部・新垣卓也)