前回は「琉球料理の神髄」について述べたが、その基盤の一つとなるのが調理法(料理法)である。四方を海に囲まれているにもかかわらず、魚料理が意外と少ないのは、亜熱帯気候であるが故に魚の鮮度が保ちにくく、保存食としての加工を優先したためである。

(イラスト・いらすとや)

 その一つにかまぼこがある。グルクンなどの地魚を原料に使い、日常の料理から正月や祝い事など晴れの日の添え物まで、琉球料理には欠かせないものとなっている。昔は、このかまぼこをいろり(かまど)の上につるして燻し、かちかちに乾燥させた保存食をかつお節の代用に削って食べたものである。

 全国一の消費量を誇るかつお節も加工が先行した食材で、琉球料理のだしを今日まで担っている。その使い方も、日本料理一番だしのような淡泊なものとは異なり、たっぷりと使って濃厚なうま味のだしを取るのが一般的である。また、日本料理では昆布でもだしを取るが、琉球料理では昆布自体を食材の一つと位置付け、煮物や汁物に使ってそのまま食べるのである。

 また琉球料理には蒸し物や焼き物は少なく、煮物、揚げ物、炒め物が多いのも特徴である。炒め物と揚げ物には、豚肉から出た余分な脂が使われてきた。汁物も多く、ほとんどの料理が具だくさんである。暑さに負けない体力を付け、塩分も補給できるようにと、汁も具もたっぷりと食べられるように考えられている。

 陽光みなぎる南国の風土を反映した豪快さに加え、豚肉やたっぷりのかつお節を用いた濃厚でコクがあり、味わい深い料理を完成させたのである。

 琉球料理の味付けにも固有性があり、基本的な調味料は塩、みそ、酢である。塩だけで煮物をつくるのをマース煮といい、魚の持ち味を生かしながらさっぱりと味わえる逸品である。天然の塩には微かな甘さや柔らかさがあり、素材のうま味や甘みを引き出す力も持っている。

 みそは、日常の生活に欠かすことのできない必需食品で、煮物、あえ物、汁物など多様に使われる。「アンダンスー」(油みそ)は豚肉とみそを一緒に炒めたもので、おむすびの具になるほか、湯を注いで即席の汁にすることもある。

 酢は、今は市販されているものを使うのがほとんどであるが、昔の琉球料理での酢は「アマザキ」と呼ばれる。

 これは、泡盛を蒸留する前に使うもろみのアルコール5度以下のもの(アフワー)をそのままつぼに入れておくと、1カ月くらいで酢酸発酵(アルコールに酢酸菌が作用して酢の成分である酢酸をつくる)して食酢ができる。沖縄にしかない独特の酢である。

 さらに琉球料理には香辛料も存在する。島胡椒(ヒバーチ)はコショウに似て香りが強く、やわらかな辛みもあって豚肉料理と相性が良い。発汗作用があるため、新陳代謝を促す働きがあり、暑い琉球には理想的香辛料となっている。「ピペリン」という成分が血行を良くし、ダイエット効果もあるとされる。沖縄そばに入れる人が多いが、島トウガラシを泡盛に漬けた「コーレーグース」を好む人も多い。いずれも琉球にしかない独特の香辛料である。(東京農業大学名誉教授)