受動喫煙対策を強化する改正健康増進法が成立した。多くの人が集まる建物内を罰則付きで原則禁煙とする法律ができるのは初めてだ。

 これまでの受動喫煙対策は努力義務にすぎず、罰則もなかったことを考えると、改正法は一歩前進ではある。しかし内容は不十分と言わざるを得ない。

 改正法は2020年の東京五輪・パラリンピックに向け、段階的に施行する。

 来年夏をめどに病院、学校、行政機関、保育園が屋内完全禁煙となる。20年4月からは、他人のたばこの煙を吸うことが多い場所とされる飲食店、職場、ホテルのロビーなどが原則禁煙となる。

 法改正を巡っては、例外的に喫煙できる飲食店の範囲が焦点になった。

 厚生労働省が17年にまとめた当初案は、店舗面積30平方メートル以下のバーやスナックに限っていた。しかし自民党の「たばこ議員連盟」などの反対で、資本金5千万円以下で客席面積100平方メートル以下に緩和。既存飲食店は経過措置として例外扱いされ、入り口に「喫煙可」などと表示すれば喫煙できるようになった。

 厚労省は新規の飲食店は規模に関係なく原則禁煙とすることから、喫煙できる飲食店は減っていくと説明するが、経過措置の期限は決まっておらず、見立て通りに進むかどうか不透明である。

 改正法で経過措置の対象となる飲食店は全体の55%と推計され、半分以上の飲食店が喫煙できる。原則と例外が逆転しており、実効性に疑問を投げ掛ける数字である。

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 政府が罰則付きの改正法にかじを切ったのは、東京五輪・パラリンピック開催がきっっかけである。

 国際オリンピック委員会(IOC)と世界保健機関(WHO)は10年に「たばこのない五輪」を推進することで合意。少なくとも08年以降の夏季、冬季の全ての開催地は罰則付きの受動喫煙防止対策が講じられてきた。

 五輪開催地となる東京都では6月、面積にかかわらず従業員を雇う飲食店は原則禁煙とする条例が成立した。

 都内の飲食店の84%が規制対象となる見通しだ。国より厳しい内容である。

 ただし国と都の対策が進んだとしてもWHOが基準とする八つの公共の場所の「屋内全面禁煙」の評価は4段階の最低から1ランク上がるにすぎない。「屋内全面禁煙」は世界の潮流である。改正法は例外規定で骨抜きにされており、早急な見直しが必要だ。

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 たばこの煙には発がん性物質が含まれ、がんや心筋梗塞、脳卒中などの原因となっていることが科学的にも証明されている。

 受動喫煙による国内の推計死者数は年間1万5千人とのデータがあり、交通事故による死者数の4倍に相当する。

 受動喫煙は喫煙者のマナーなどの問題ではなく、他人のたばこの煙を吸わされる人の命と健康を脅かす問題だと認識しなければならない。

 一人一人が受動喫煙を防止する意識を高めることも重要だ。この機会に県でも条例に向けた議論を進めてほしい。