「ウテードゥイ(謡う鶏)」と呼ばれ、琉球王府時代から、鳴き声がめでられてきた県指定記念物の地鶏チャーン。本島中部では愛好家が自慢の鶏を持ち寄り、美声を競うコンテストも開かれている。琉球古典音楽の節回しなどを基準に採点される。琉球古典音楽野村流音楽協会師範で、チャーン保存委員会の理事を務める又吉章盛さん(77)=うるま市=に、琉球古典音楽との関係や、あふれるチャーン愛について聞いた。(特報・新崎哲史)

チャーンを抱く又吉章盛さん。お気に入りの鶏は定期的に虫取りし、大切に育てる=うるま市宮里

丸みのある体とピンと張った胸元、あごひげなどが特徴のチャーン

チャーンを抱く又吉章盛さん。お気に入りの鶏は定期的に虫取りし、大切に育てる=うるま市宮里

丸みのある体とピンと張った胸元、あごひげなどが特徴のチャーン

 「ケッ ケー ケッ」。チャーンは3音節からなる鳴き声が特徴。最初の「ケッ」は琉球古典音楽の「ぬみんじゃし(飲むように出す)」と表現され、音程が上がっていく「ケー」は「あぎすぐぢん(上直吟)」、一拍おいて締めの「ケッ」の「ちらし」に至る。

 又吉さんは25歳のころチャーンの飼育を始め、同時期に本格的に琉球古典音楽を学び始めた。「かぎやで風」の稽古で「きゆーぬー(今日の)」と歌い始めたところ、師匠に「あらんど。くれ、『きっ、ゆーぬー』ぬみんじゃしやんど(違うぞ。これは飲むように出す歌い方だ)」と指摘された。

 翌朝、チャーンの声を聞いていると音階も含め、「かぎやで風」と一致することに気付いた。チャーンの鳴き方で、2音節目で最初から高い声で鳴くのは「述懐(すっくぇー)節」に共通するという。

 又吉さんは「チャーンの声が古典音楽に似ているのではなく、古典音楽そのものがチャーンの謡い方を元に創作されたのではないか」と共通点の多さに想像を巡らせる。

 チャーンの鳴き方を評価するには、さまざまなポイントがある。

 音程は三線の開放弦の音が基準だ。ナカジル(中弦)の音だと、きれいな「ケ」に聞こえる。だが、低いウージル(男弦)だと「コ」、高いミージル(女弦)だと「キ」に聞こえる。コンテストでは減点対象となる。

 2音目の「ケー」の音程が乱れずに伸びると「くぃとぅみ(口を止める)」と評価される。短いと「いんちゃさん(短いな)」と減点される。

 そのほか全体の鳴きの長さを測る「くぃーなぎ」。10年は「謡い手」として活躍するチャーンがベテランの域に入る3、4歳から声にわびさびが入る「うむいいり」なども加点対象だ。

 声質についても特徴がある。大きな声で響きがある鶏は、商売人が多い那覇に例えて「なーふぁどぅい(那覇鶏)」。声は小さいが哀調がある鶏を「すいどぅい(首里鶏)」と呼ぶ。「飼う主にはそれぞれに好みがある」と又吉さん。

 2音目の伸びの部分で、節回しを入れて再度伸びる「ふちけーし(吹き返し)」は、数万羽に1羽程度の貴重な鶏という。

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 チャーンの由来は詳しく分かっていないが、又吉さんによると14世紀に中国から持ち込まれ、士族を中心に愛玩鶏として普及した。後に庶民にも広がったが沖縄戦で、伝統は途絶えた。

 保存会は1975年に結成。一時は会員300人が800羽を飼育したが、現在は約40人が300羽を飼う。会員の高齢化も進み、若い人への継承が最大の課題だ。

 又吉さんは「いい声を出す掛け合わせを考えたり、ひなから謡い出すまでの4、5カ月を待つのも楽しい。朝に素晴らしい声で目覚めると一日が幸せになる。この魅力を伝えていきたい」と力を込める。