当初の目的から外れ、自治体の序列化につながる弊害の方が大きくなっているのではないか。効果を検証し、見直しを進める時期だ。

 文部科学省の「全国学力テスト」が熊本地震に見舞われた地域を除き、全国一斉に行われた。2007年度に43年ぶりに復活して以来、10年目の実施である。県内でも公立小学校256校の6年生と公立中学校143校の3年生が国語と算数(数学)で、基本的な知識をみるA問題と活用力を測るB問題に臨んだ。

 復活1年目の学テで沖縄県は平均正答率が小中学校とも全国最下位だったのみならず、大きく引き離されていたことが教育関係者や保護者らにショックを与えた。

 県教育庁は取り組みを強化。指導主事が一校一校回って授業の改善を助言し、学力先進県といわれる秋田との教員交流を始めるなどさまざまな対策を講じてきた。

 小学校は14年度に全科目で最下位を脱し、15年度には全教科の平均正答率が全国20位にランクアップ。中学校は最下位のままだが、全国平均との差を縮めた。子どもたちも自信をつけたに違いない。県教育庁の対策が実を結んだことは喜ばしい。

 だが、教員からは「過去問学習を優先し、新学期の国語と算数が進まない」との弊害の声が聞こえてくる。全国的な傾向だが、学テのための授業になっては本末転倒だ。

 学校行事へのしわ寄せも深刻だ。過去問の繰り返し学習によって単なる知識ではなく、課題を見つけ、解決するような「確かな学力」を身に付けることができるだろうか。

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 馳浩文科相は学テ対策としての過去問学習に「点数を競争するための調査ではない」と批判した。学校現場を点数至上主義に追い込んでいるのが当の文科省である。自身がその最高責任者であることを忘れているというほかない。

 学テは当初、義務教育の教育水準が確保されているかを把握し、教育指導の改善を図ることなどが目的だった。

 学テ後に文科省が都道府県別の平均正答率を公表し、14年度からは都道府県教委や市町村教委が市町村別、学校別の成績を公表できるようになった。保護者の関心が高く地域や学校間の競争と序列化が教育現場に持ち込まれるのは予想できたことである。

 県内では沖縄市や名護市など12市町村が自治体の平均値を公表する方向で検討しているが、慎重さを求めたい。

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 学テが毎年、全小中学校、全員参加の悉皆(しっかい)方式でなければならないのか。教育水準の把握には抽出方式でも可能だ。応用を問うB問題に課題があるとの傾向は変わらない。分析を深め、どう対策を講じるかに重点を移すべきだ。

 学力は、親の経済力と相関関係にある。沖縄では子どもの3人に1人が貧困だ。

 日本の教員は先進国の経済協力開発機構(OECD)で飛び抜けて多忙だ。国内総生産(GDP)に占める教育機関への公的支出の割合も最下層だ。1学級の児童・生徒の数も多い。学テの予算を振り分けるなどしてこれらの問題を含め見直しを求めたい。