【森田のりえ通信員】「海から豚がやってきた」の著者でノンフィクション作家の下嶋哲朗さんが1日、ロサンゼルス近郊のガーデナ市で「沖縄の語り継ぐべき宝 比嘉太郎の人間愛とガジュマルの樹」と題して講演した。終戦直後の荒廃した沖縄にハワイから豚550頭を送るなど救援活動に尽力した故・比嘉太郎氏について「沖縄を救えと一粒の種をまいた。それが比嘉太郎であった」と紹介し、語り継ぐことの大切さを説いた。250人が聞き入った。

講演した下嶋哲朗さん(右)と主催した上原民子さん=米ロサンゼルス郊外のガーデナ市

 ウチナー民間大使の上原民子さんが主催した。

 比嘉氏は1916年、ハワイ生まれの沖縄系帰米2世。太平洋戦争時、日系人で組織した米陸軍に所属し、イタリア戦線の激戦地で重傷を負って除隊。後に沖縄戦に志願し通訳兵となった。ガマに武器を持たずに入り、住民にウチナーグチで投降を呼び掛け、多くの人命を救った。

 終戦後、廃虚と化した沖縄の惨状をハワイの安里貞雄氏に幾度となく書き送った。大きな反響を呼び、沖縄救援運動が大々的に展開された。

 下嶋さんは「日本には太郎物語が昔からある。桃太郎、金太郎などです。だが、きょうお話しする太郎物語は皆さんの宝です」として本題に入った。豚を送ったのは救援の一つにすぎないこと、多くの人が立ち上がり、成功の陰に米国人の大きな支援があったことなどを語った。

 比嘉氏の2人の息子に会い、ハワイや沖縄で綿密な取材を続けてきた下嶋さん。画家でもあり、講演では、絵や古い写真を映像化し、分かりやすく2時間で構成した。「人種、宗教、国境を超えた救済運動の話は語り継がねばならない。なぜなら、一粒の種は、いつか再び花を咲かせる種子だからだ」とした。

 「取材は大変だったのではないか」と尋ねられた下嶋さんは「取材は楽しいですよ。どうまとめるかが大変なんです。比嘉太郎物語のミュージカルをつくりたいと思っています」と満足そうな笑顔で答えた。

 比嘉氏と面識のあった沖縄ハワイ協会会長の高山朝光さんも訪米。司会は沖縄系ハリウッド女優タムリン・トミタさんが務めた。アルゼンチン在住歌手のグース外間さんらの演奏もあった。