旧優生保護法の下、障がい者らが不妊手術を強いられた問題で、与党ワーキングチームと超党派議員連盟による救済案の検討が本格化している。

 被害者が高齢化していることを考えると、残された時間はそう多くない。当事者の訴えを尊重し、迅速かつ積極的な救済を目指すべきだ。 

 「不良な子孫の出生防止」を目的とした旧法を巡っては、今年に入り国家賠償請求訴訟が各地で起きている。

 国会による救済案づくりは、司法判断とは別に、政治の課題として解決を図ろうというものだろう。

 ワーキングチームは、支援対象者や支援内容を中心に議論を進め、補償額や被害認定の仕組みを年内にもまとめる予定だ。

 超党派議連は、謝罪・補償の在り方を定めた法案の原案を秋ごろまでに整理するという。

 両者は来年の通常国会での法案提出を目標にしている。

 厚生労働省の統計で、旧法下で不妊手術を受けた障がい者らは約2万5千人に上る。そのうち約1万6500人が本人同意のない強制手術とされるが、個人名が記載された資料が残っているのは3割にとどまる。

 旧法が母体保護法に改正されて20年余、国は資料の現存状況を把握してこなかった。被害を裏付ける証拠が失われてしまったのは問題を放置してきた行政の怠慢でもある。

 被害認定は幅広く行われるべきで、記録がない場合でも証言や手術痕などにより救済されるよう特別な配慮を求めたい。

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 被害者の中には、入所する施設で周囲の説得にあらがえず、手術に「同意」したという人もいる。

 今年5月、沖縄愛楽園で開かれたハンセン病市民学会でもこの問題が取り上げられ、全容を明らかにすべきだとの声が上がった。

 旧法はハンセン病患者への不妊手術について本人と配偶者同意を必要としたが、強制隔離政策の下、実際は結婚の条件として強要された場合が多かったからだ。手術を受けなければ夫婦部屋に移ることができず、さらに女性が中絶を強いられたケースも明らかになっている。 

 日弁連がまとめたデータでは、ハンセン病を理由とした男女への不妊手術は1551件。

 同意に基づき不妊手術を受けたとする約8500人についても、実態はどうだったのか、丁寧な検証が必要だ。

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 知的障がい者ら約6万3千人に不妊手術が行われたスウェーデンでは、政府が「野蛮な行為だった」と謝罪し、1999年に被害者補償を決めている。

 その補償対象は、同意せずに手術を強いられた人のほか、当局の要求に応じる形で手術を受けた人なども含んでいる。

 問題は「強制」か「同意」かではなく、不良な子孫として人間を差別する優生思想そのものだ。

 謝罪や補償と同時に、社会に潜む差別意識にも向き合わなければならない。