俵山には地震の爪痕がはっきりと残る。亀裂だ。熊本地震で甚大な被害を受けた熊本県西原村。「震度7」の揺れは村の6割以上の家屋を全半壊にした。そこに追い打ちをかけるかのような激しい大雨。525世帯に出されていた避難勧告は22日解除されたが、村人は避難生活を強いられている。

西原村を歩きながら「ユイマール精神に支えられてる」と語る童謡歌手の曽我さん=20日午後6時ごろ、西原村万徳区

 20日午後3時半、熊本県道28号線。西原村を目指し、レンタカーのハンドルを握った。途中、アスファルトがむき出しの道が数カ所。「支援物資」と書かれた自衛隊の車両と3度すれ違い、ようやく西原村に到着したが崩壊した集落に言葉を失った。

 車道にはガラスやコンクリートの破片、土砂が散乱している。傾いた家を見つめぼうぜんと立ち尽くしていた91歳の女性は「長く生きて、こんな揺れは体験したことがない。夫との思い出も家も全部失った。先行きが見えない」と嘆いた。 沖縄にめいっ子がいるという桂悦朗さん(63)は26年間住んでいた家屋を失った。「一瞬で何もかも奪ってしまったけぇー。裏山(俵山)の形も変わっとる。いつ崩れるかわからん。もうここにはいられない」

 避難者が身を寄せている同村万徳区にある山西小学校。同区出身の童謡歌手、曽我実磨子さん(31)も被災者の1人だ。人気キャラクター「くまモン」のテーマソングを歌う曽我さんは、4月上旬、沖縄市の児童養護施設などでボランティアコンサートを開催したばかり。沖縄から帰ってきて10日後に2度の強い地震に襲われ、自身の家も全壊した。地震でプロパンガスのタンクが倒れ、ガス漏れが発生。「一歩間違えたら死んでいたかも。振り返るだけで手の震えが止まらない」

 沖縄から安否を心配するメールが何十通も相次いだ。沖縄で義援金を呼び掛ける人たちの写真が添付されているのを見てうれしかった。「本当に辛くて大変な思いをしているけど、沖縄の人たちが応援してくれている。今、沖縄のユイマールの精神を肌で感じている。落ち着いたら、また沖縄の子どもたちのために歌を歌いたい」。(中部報道部・比嘉太一)