辺野古・大浦湾の海には、たくさんの種類のサンゴが生息し、サンゴ礁をすみかとする魚たちが泳ぎ回る。浅瀬にはジュゴンの餌となる海草藻場が広がり、湾の奥にはマングローブ林が延びる。

 新基地建設予定地の名護市辺野古沖を含む沖縄島と離島沿岸の大半を「重要海域」とする環境省の区域図が公表された。

 国内でも極めて生物多様性の高い地域であることを、あらためて証明するものだ。

 重要海域は、海に生きる生物を守るため「生物多様性の観点から重要度の高い海域」を明らかにしている。

 2010年に名古屋で開かれた生物多様性条約締約国会議の「愛知ターゲット」では、20年までに少なくとも陸域の17%、海域の10%を保護区などとして守る数値目標を掲げる。

 議長国だった日本は、目標達成に大きな責任を負っており、重要海域選定の次のステップが、開発などを法的に規制する「海洋保護区」の設置だ。

 日本に海洋保護区という区域はない。政府は自然環境保全地域や保護水面などが海洋保護区に該当するとの認識だが、そこでとられている規制は十分とはいえない。

 開発や乱獲、汚染、水温上昇などから海を守るには、生物多様性を確保しながら水産資源を持続的に利用する新しい保護区が必要である。国際的に広がる海洋保護の概念と科学的根拠に基づいた指定で効果的な対策が求められている。

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 最近公表された沖縄防衛局の調査で、2014年8月以降、辺野古崎付近でジュゴンの新たな食み跡が確認されていないことが明らかになった。同年4月に13カ所、5、6月は各28カ所、7月は8カ所見つかっているが、8月以降、ぷっつり途絶えている。

 一昨年の8月といえば、新基地建設に向けてブイやフロートが設置され、海底ボーリング調査が始まった時だ。音に敏感なジュゴンが、工事の影響ですみかを奪われたのではないか、懸念される。

 国の天然記念物でもあるジュゴンは、環境省のレッドリストで、近い将来、絶滅の危険性が高い「絶滅危惧1A類」と判定されている。

 海洋環境の保全が叫ばれる中、重要海域に選定した以上、ジュゴンを守る責務が生じるのは当然だ。

 なぜ急にいなくなったのか、どこへ行ってしまったのか。今、国がやるべきことは、ジュゴン保護に向けての継続的な生態調査である。

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 ジュゴンだけではない。辺野古の海には、絶滅危惧種262種を含む5300種以上の海洋生物が確認されている。

 辺野古訴訟の和解により、現在、基地建設はストップしているが、工事が再開されるようなことがあれば、これら希少な生物も、サンゴも、藻場も破壊される恐れがある。

 県の自然環境保全指針で厳正な保護を図る「ランク1」に指定され、国の重要海域に選定された地域と、巨大な新基地建設が矛盾するのは誰の目にも明らかだ。