市民が「米軍は沖縄から出て行け」と言ったらヘイトスピーチ(憎悪表現)になるかもしれない。一方で沖縄差別をあおる演説は問題ない。与党の対策法案はそんな内容だ。

ヘイトスピーチに抗議するデモ参加者=2014年11月2日、東京都

 武装し日米地位協定で特権を保障される米軍人と、丸腰の一般市民。圧倒的に力がある米軍人の方を守るような規定は、もちろん修正が必要だ。

 それにしても、私たちはヘイトスピーチ問題に無関心すぎたのではないか。沖縄で大規模な被害が少なかったとはいえ、報道も足りなかった。そのつけが不可解な法案となって回ってきたとも言える。

 「殺せ」「日本からたたき出せ」。こうした下劣な言葉が、主に在日コリアンの尊厳を深く傷つけてきた。被害があまりに深刻で、表現の自由との関係を考えてもやはり法的対策が必要だとの合意が、本土では形成されてきた。

 本当は、沖縄もすでに標的にされている。オスプレイ配備に反対して銀座をパレードした首長たちは「売国奴」、名護市辺野古で新基地建設に反対する市民は「ゴキブリ」とののしられた。

 沖縄も当事者としてヘイトスピーチ法案について考えられるはずだ。論点は多い。「保護に値しない表現」をどうやって決めるか。正当な抗議活動と、個人攻撃の境目はどこか。罰則は必要か-。

 基地反対運動の規制を示唆した長尾敬衆院議員の発言は、議論のきっかけになるかもしれない。

 例えば与野党の修正協議で米軍人が保護の対象外になり、逆に沖縄が対象に入ったとしても、それがゴールではないはずだ。差別をなくすために何ができるかという問いに、真摯(しんし)に向き合っていきたい。(北部報道部・阿部岳)