熊本市中央区の繁華街を外れた路地の一角に沖縄料理店「ぬちぐすい」がある。店主の新里博昭さん(56)=浦添市出身=は震災後も「ソーキそば」と書かれたのぼりとオリオンビールのちょうちんを掲げて営業を続けている。熊本地震発生後の炊き出しで振る舞ったジューシーとサーターアンダギーが被災者たちの空腹を救った。(中部報道部・比嘉太一)

震災後、エイサーの衣装を着て店を再開させた新里博昭さん。店の前には震災でのがれきやごみが積まれている=22日、熊本市中央区・沖縄料理「ぬちぐすい」

 14日の夜に発生した震度7の地震。カウンター客と会話しているさなかだった。突然揺れだした地面。棚に並べて置いてある泡盛瓶80本が次々と倒れていった。横揺れで立っているのもやっとの状況。思わず「でーじなっている」との言葉が飛び出した。

 沖縄県人が集う“憩いの場”となっている新里さんの沖縄料理店。常連客の多くは熊本市内の大学などに通う学生たちだ。その学生らの多くが震災後に帰省し、地元沖縄で義援金を呼び掛けている。その様子を偶然、フェイスブックで見つけた新里さん。「自分も何かできないか」と考えついたのがジューシーとサーターアンダギーの炊き出しだった。

 地震から5日後、店の前に「炊き出し中」の看板を掲示。2日間でジューシーおにぎり120個とサーターアンダギー240個を振る舞った。SNSで呼び掛けたところ、多くの熊本の人たちが店に立ち寄り沖縄料理を食べに来たという。中には「ジューシーとは何ですか?」と質問する人も。新里さんは「沖縄の炊き込みご飯」と説明し、笑顔で手渡した。

 沖縄の食材で元気にしたいとの思いを込めて店名を「ぬちぐすい(命の薬)」にした。ぬちぐすいは店名同様におなかをすかせた被災者たちを元気にした。

 新里さんは言う。「震災でみんな必死。沖縄県人が頑張っているのが自分の励みになっている。復興の道は長い。これからが大変だが、この場所から熊本を元気にする」