台湾で1947年に国民党政権が住民を武力弾圧した「2・28事件」をめぐり、県出身犠牲者3人の遺族が今夏にも、台湾当局に賠償を求めて提訴するため、準備を進めている。2月には外国人で初めて、父親が巻き込まれた青山惠昭さん(72)=浦添市=への補償が認められている。続く遺族は「真相を明らかにし、無念を晴らしたい」と決意する。

父・仲嵩實さんの遺影を手にする徳田ハツ子さん。「命ある限り死の真相を求める」と決意する=21日、那覇市内の自宅

 事件で失踪した県出身者は4人。仲嵩實さん=当時(29)、石底加禰(かね)さん=同(39)=は、船のエンジンを動かす部品を求めて与那国島から台湾北部の基隆(キールン)へ渡り、事件に遭遇した。大長元忠さん=同(39)=は、日本の植民地時代に台北近郊の北投(ペイトウ)で駅長を経験。戦後故郷の石垣島に引き揚げたが、知人に預けていたものを取りに行くと再び台湾に向かい、消息を絶った。

 仲嵩さんの長女、徳田ハツ子さん(79)=那覇市=は、小学3年のころに父と死別した。船乗りで不在がちだったため、父の記憶はほとんどない。国内外の研究者の協力を得ながら情報収集し、提訴を決意。事件で2万人余が虐殺されたと知り、胸を痛める。「父がどんなに苦しんだかと考えると眠れない。命ある限り死の真相を求め、供養したい」

 遺族らは2014年1月、「台湾228事件、真実を求める沖縄の会」を結成し、被害解明に努めてきた。代表世話人の青山さんが先に提訴し、外国人で初めて失踪者と認められる「画期的な判決」を得たが、「真相解明はまだ緒に就いたばかり。関係者は高齢化しているため、残る遺族の手続きを急ぎたい」と前を向く。27日午後6時から、浦添市のてだこホールで、事件や戦後補償について考えるシンポジウムを開く予定だ。

 台湾228事件沖縄調査委員会代表の又吉盛清沖縄大学客員教授は「台湾は民主化が進み、人権に国境はないと沖縄人への賠償を認めたが、日本の補償は後手に回っている」と指摘する。「『慰安婦』や外国籍日本兵らの問題は解決されていない。沖縄から道を開きたい」と、理解を呼び掛けた。(社会部・嘉数よしの)