今から20年ほど前、県の情報公開制度を使って取材をしていた時のことだ。窓口の職員の受話器から、電話をかけた相手の声が漏れ聞こえてきた。「そんな要求に、全部答える必要があるの?」

▼民は由らしむべし、知らしむべからず。国民は政府の方針に一方的に従えばいい。「論語」のそんなくだりを地で行く反応。制度が始まって日が浅く、趣旨がまだ理解されていなかったのか

▼時はたっても「行政情報は自分たちの占有物」という公務員の意識に、あまり変化はないようだ。金融庁の職員が朝日新聞の記者が求めた情報公開の内容を漏えいしていたことが発覚した

▼漏らした相手は情報公開制度を所管する官庁トップの野田聖子総務相。「不適切だった」と自分を処分することになるというが、まるで茶番のよう。金融庁側は「いずれ報道される可能性が高く、情報を共有していた方がよいと判断した」と説明する

▼先の「論語」の一節。もとは、文字で書かれた法律を文盲の民は読むことができず、為政者の意図を理解させるのは難しい、という意味だとされる

▼情報公開制度は、行政がしていることが適切かどうか国民が知るための重要な仕組み。私たちが納めた税金で運営される公的機関が集め、保管されている情報を共有すべき相手は大臣か国民か。考えるまでもない、答えは明白だ。(玉城淳)