周りに迷惑がかかるからと一般の避難所に行くことをためらい、かといって福祉避難所を利用することもできない。

 熊本県を中心とした一連の地震で、体が不自由なお年寄りや障がい者が、より厳しい状況に立たされている。なぜ福祉避難所は機能していないのか。災害弱者を救う仕組みの再点検を求めたい。

 地震発生前、熊本市は民間の高齢者福祉施設など176施設と「福祉避難所」協定を結び、最大で1700人の入所枠を確保していた。

 福祉避難所は、介護や支援が必要な高齢者、障がい者のほか、認知症患者、妊婦らが、一般避難者に気を使うことなく安心して過ごせる場である。そのためバリアフリー化された高齢者施設や障がい者施設と協定を結んでいるケースが多い。

 今回の地震で熊本市に開設された福祉避難所は30余。受け入れ人数も想定の1割以下にとどまっている。

 施設自体が損傷し、職員が被災したり、もともとの入所者の世話で手いっぱいなど、現場はそれどころではなかったようだ。

 連続して震度7の地震に見舞われた熊本県益城町では、一般避難者が殺到したことから、福祉避難所の開設を断念している。

 そもそも介護の現場は忙しく、慢性的な人手不足である。自治体との協定には強制力がなく、職員の気持ちや努力だけで避難所を維持するのは難しい。

 協定が生かされなかった理由については、落ち着いた段階で検証してほしい。

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 福祉避難所は1995年の阪神大震災をきっかけに必要性が叫ばれた。東日本大震災では220カ所設置されたというが、その存在は周知されず、「支援の質」が指摘された。

 内閣府の調査によると、2014年10月時点で福祉避難所を指定しているのは全体の半分に満たない791自治体の7647カ所、うち県内は115カ所。  

 福祉避難所を含む指定避難所の場所について、9割の自治体が「周知している」と答えているのとは裏腹に、熊本地震でも周知不足に不満を訴える声が聞かれた。

 広報誌やホームページに載せるだけの周知では、高齢者など情報弱者には届きにくい。

 自力避難が難しい要支援者や家族には、あらかじめ民生委員や保健師などを通した丁寧な連絡が必要である。

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 福祉避難所を適切に機能させることは、現在困難に直面している人たちにとってはもちろん、国民の4人に1人が高齢者で、いずれ要支援者になるであろう私たちにとっても重要な問題だ。

 災害時に施設間で職員を派遣し合ったり、介護や医療ボランティアを優先的に配置するなど見えてきた課題もある。要支援者も参加した訓練も大切だ。

 熊本地震は、日本が地震国であることの恐怖を改めて思い起こさせた。次の災害に備え、国も仕組みづくりに積極的にかかわってほしい。