沖縄県の本部半島で、1人乗りの電気自動車(EV)を貸し出す新しい観光サービスが始まっている。トヨタ自動車と地元協議会が運営。小回りが利く特長を生かして、地域に埋もれた「宝」を観光資源に変える。来年以降の本格稼働に向けて、知名度アップが課題となる。(北部報道部・阿部岳)

超小型EVでのんびり回る。闘牛を世話する空き地も立派な観光スポットに=本部町山里

2本の木が絡み合った「恋人ガジュマル」

超小型EVでのんびり回る。闘牛を世話する空き地も立派な観光スポットに=本部町山里 2本の木が絡み合った「恋人ガジュマル」

 「これ、どこで乗れるの?」「地元の人も借りられる?」。超小型EVの運転中は、よく歩行者に話し掛けられる。静かなモーター音、親しみやすい外観のおかげか。両側の布製ドアは取り外し可能で、気軽に乗り降りできる。外からも中からも、敷居が低い乗り物だ。

 本部町瀬底島の細い道に入っていく。ゲートボール中のお年寄りが手を振ってくれた。案内役の町観光協会の祖慶良太さんは「レンタカーだったら歓迎されないでしょう。小さくて静かなEVだからできるコース設定です」。

■コースは8通り

 コースは現在8通り。EVを貸し出し、参加者にはナビの通りに運転してもらう。地元の人が行くビーチ、共同売店、民家の軒先で2本が寄り添う「恋人ガジュマル」など、穴場スポットをつなぐ。

 トヨタの担当者、大西洋さんは「ここでは車は移動手段でなく、遊園地のアトラクションのようなもの。スポットを結ぶことで、観光地が面として広がる。さらに人と人もつなげれば」と話す。

 実際、人の輪は広がっている。貸出場所のホテル、立ち寄り先の事業者、行政が運営協議会で顔を合わせ、意見を交換する。町営市場通り会会長の知念正作さんは「ホテルや役所の人と同じ席で語り合うのは初めてで、お互いに発見がある。つながりができたのは大きい」と話す。

■拡充へ連携課題

 サービスの正式名称は「ちゅらまーいHa:mo(ハーモ)」。現在は本部町と今帰仁村の6カ所で借りられ、料金は2時間3240円、4時間5400円。

 年内は実証実験の位置付けで、トヨタが車両30台などを無償提供している。ただ、来年以降も続けるなら地元も一定の負担が必要になる。

 1月の運営開始から3カ月、利用者は徐々に増えているがまだ月に数十人。利用者増に向けて、まずはコースの拡充を決めた。名護市役所羽地支所、屋我地支所が協議会に加わり、さらに伊江島にも広げることを検討している。

 本部町観光協会の祖慶さんは「行政の横の連携ができれば、本部半島一帯を一つのエリアとして旅行社に売り込める」と期待。今帰仁村観光協会事務局長の又吉演さんは「何度も来ているリピーターや県民でも、必ず新しい発見がある。大人数は受け入れられなくても、満足度を高める仕組みとしてゆっくり育てていきたい」と話した。