日本銀行が、これまで進めてきた大規模金融緩和の政策を修正した。短期金利をマイナス0・1%、長期金利を0%程度とする基本路線は維持したが、長期金利の上昇をある程度容認し、地域金融機関の経営悪化などの大規模緩和による副作用を減じる措置を決めた。

 ただ、副作用への対処の効果は限定的とみられる。金融緩和をより長期に続ける目的から派生しているため、むしろ長いスパンでみると弊害は膨らみ続ける懸念がある。

 今回の政策修正のポイントは、大規模緩和を長期に続けていくための備えという点にある。

 長期の緩和継続の背景には、2020年度までに2%の物価上昇率の目標を達成できないとの日銀の認識がある。日銀が示した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、20年度の物価の上昇率の見通しは1・6%にとどまり、前回4月に示した1・8%を下方修正した。

 日銀は5年前、「2年で2%を達成する」と強調し、大規模緩和に踏み切ったが、達成できず、目標時期の先送りを繰り返してきた。その都度、「2年後に2%を目指す」と言い続けた先送りは、6回に上る。

 今回は目標達成が不可能と早くも認め、極めて低い長短金利の水準を「当分の間」維持するため、緩和策自体も変えないと表明した。そうすると緩和の長期化は避けられなず、緩和策は強化されたともいえる。そのため、さまざまな副作用への対応に追い込まれたのが今回の決定である。

■    ■

 2%の物価上昇率が早期に達成できないと認めたが、難しいと感じてきた多くの人たちからは「遅すぎた」というのが率直なところだろう。

 日銀は想定通り物価が上がらない要因を分析している。働きに出る女性や高齢者が増えたが低い賃金で働く人も多く、全体の賃金上昇が抑えられている。長いデフレで消費者が値上げに敏感となり、企業が値上げしにくい。ネット通販で安い物を探す傾向が強まり、メーカーや小売り側に値下げ圧力がかかる。

 だが、これらの要因が解消され、物価上昇につながる道筋は見通せない。

 だから長期の金融緩和が必要だというのが日銀の理屈だが、副作用は深刻になっている。金融機関の経営だけでなく、低い預金金利は高齢者の生活にも影響を及ぼす。日銀が国債を大量に購入するため、国の財政規律が緩み、財政政策がゆがめられている。

■    ■

 大規模緩和策の開始から5年たち、賃金は伸び悩んでいるが、企業業績は高水準を維持し、雇用情勢も特に深刻な問題はない。物価上昇率が2%に達していなくても、経済は安定し、物価が持続的に下落するデフレスパイラルに引き戻される恐れは差し迫っては感じられない。

 物価上昇率が1%を超えて安定的に推移していれば、たまる副作用を横目に、2%に向け緩和策を継続することは、説得力を持ち得るだろうか。2%の目標は絶対的な命題なのか。政策の見直しを考える時期ではないだろうか。