1996年12月3日という日を当時八重山署長だった島袋善雄さん(77)は忘れられない。オウム真理教幹部だった林(現姓小池)泰男元死刑囚を署員が石垣島で逮捕した日である

▼港での目撃情報は午前10時すぎ。いったん見失うも住民の情報を得て正午ごろ市役所近くで再び発見して署に任意同行した。指紋照合を経て取調室で向かい合うと「間違いない」と本人であることを認めた

▼地下鉄サリン事件の実行犯として特別手配されていた幹部の逮捕に島は騒然となった。テレビは速報で伝え、夕方に石垣空港から宮古経由で東京の警視庁に引き継ぐまで署にはマスコミなどからの電話が途切れなかった

▼林元死刑囚を含む13人の死刑が執行され、島袋さんは「来るべき日が来た」と重い口を開いた。逮捕前の5月と6月、西表島の険しい山を捜索した際の住民の協力に感謝したかったという

▼地下鉄サリン事件などの犠牲者は29人に上り被害者は6500人以上に及んだ。関係者が何度も訪れた八重山では毒物の危険も含め住民の不安を取り除く目的もあった

▼高学歴の若者が教団にひかれた理由は何だったのか。凶行に走ったのはなぜか。あれから22年。オウム事件は一つの区切りとされるが、島袋さんの目には自己中心的で動機が分かりにくい事件はむしろ増えたと映る。(溝井洋輔)