いつの時代の話か、と耳を疑ってしまう。

 不正入試問題に揺れる東京医科大の一般入試で、医学部医学科の女子受験生の得点を一律に減点していた疑惑が浮上した。

 卒業生の大半は医科大の系列病院で働くといわれる。女性は結婚や出産を機に職場を離れるケースが多く、医師不足を解消するために、女子の合格者を全体の3割前後に抑えていたというから驚く。

 募集要項にも男女の定員に関することは一切記載されておらず、説明義務に違反する。仮に記載されていたとしても、性差を理由とした差別であり、男女平等を定めた憲法違反の疑いさえある。

 医学科の一般入試では、数学・理科・英語のマークシート方式(数学の一部を除く)の1次試験と、1次試験をパスした受験生が2次試験の面接と小論文に臨む方式だ。

 女子受験生の1次試験の点数に、年度ごとに「90%」「85%」などと決めた係数を掛けていた。女子受験生を一律に減点し、2次試験に進むのを少なくするためである。

 医科大関係者は得点操作は2010年ごろには「暗黙の了解となっていた」と証言している。不正が長期間にわたっていた可能性がある。

 10年度入試の合格率は女子が男子を上回り、合格者の約4割を占めた。しかし、これを最後に、11年度以降は女子の合格率が男子を上回ったことは一度もない。

 誰の指示で、いつ始まったのか。医科大は弁護士による内部調査をしているが、全て明らかにする必要がある。

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 医師を目指し必死に勉強していた女子受験生への背信行為であるとともに、国や企業などが進める男女共同参画の取り組みにも逆行する。

 女性が結婚や出産、育児のために離職や休職が多いことを減点する理由として挙げるのは、本末転倒である。

 むしろ女性医師がキャリアを積み、常態化している長時間労働を改めて働き続けられるような環境づくりに尽力することこそが重要だ。

 厚生労働省の調査によると、医師全体に占める女性の割合は約2割にとどまる。

 経済協力開発機構(OECD)加盟国では女性医師が7割超のエストニアをトップに、5割超が8カ国、4割超は20カ国に上る。

 日本は下位グループにとどまる。女性医師を支援する仕組みや労働環境の整備が不十分であることの表れだろう。

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 医科大を巡っては前理事長らが贈賄の罪で在宅起訴されている。文部科学省の前局長から私大支援事業で有利な取り計らいを受ける見返りに、前局長の息子の点数を加点させて合格させたとされる。

 医科大では、過去に点数を操作して合格させる受験生のリストが作成されていることも明らかになっている。

 公正な入試なら合格していた女子受験生の中には別の道を選択した人もいるだろう。医科大は過去にさかのぼり、不合格となった受験生の救済策を提示してもらいたい。似たようなうわさは他大学医学部でも絶えない。文科省は調査に乗り出すべきだ。