「懐かしのメロディーにはよりよく生きるヒントが隠れている」。本の帯文にあるキャッチフレーズである。団塊の世代でもある著者は、少年時代から親しんできた好きな曲で心身を躍動させてきた。読者は、目次の曲目だけをめくるだけで懐かしさとほろ苦さが入り交じり、遠い日々が身近に引き寄せられてくる。ウクレレきよしの歌謡医学エッセイは楽曲の体験がユーモアを交えながらちりばめられる。あの頃、あの時、ラジオやテレビ、映画、レコード盤、ジュークボックスの各媒体から流れ出る音に五感のアンテナを張るかのようにその風を吸い込んでいった青春時代。

幻冬舎・1188円/ながた・きよし 1948年生まれ。那覇市出身。精神科医。東京都立松沢病院、沖縄県立精和病院などでの勤務を経て2001年、那覇市国場で心療内科長田クリニック開院

幻冬舎・1188円/ながた・きよし 1948年生まれ。那覇市出身。精神科医。東京都立松沢病院、沖縄県立精和病院などでの勤務を経て2001年、那覇市国場で心療内科長田クリニック開院

 歌にまつわる軽妙なタッチで歌詞を解説してみせる。口ずさみながら、その気持ちを察しつつ、軽いジャブで勇気づけてくれる。歌や歌詞の内容に癒やされ勇気づけられた経験は誰にでもあると思う。「目を閉じて何も見えず/哀しくて目を開ければ…」。『昴』谷村新司では、著者自身の人生の分岐点と重ね合わせ、その時の悩みと夢と決意を投影する。永遠の大ヒット曲『レット・イット・ビー』ビートルズ、その詩的な歌詞を、普遍的な心理療法や気持ちの持ち方を、歌を通して身近に引き寄せている。さらに、りりィのヒット曲(1974年)『私は泣いています』。私は泣いていますベッドの上で…で始まり、かすれた声が浮かぶ。相手を許し、幸せを願う歌詞で締めくくる。実際には布団の上で寝ていたというりりィではあるが、歌詞は悲しみにも夢を乗せる。

 その昔、西洋の哲学者ベルクソンは『笑いについて』の書の中で「笑いは、人間精神の営みであり、心身の健康によい効用…」と述べている。日常生活や仕事における緊張状態からの放心であり、思考の疲労感からの休息である。意識の硬直性を笑いは矯正しようとする行為でもある。本書を読みながら一人でうなずき、どぅーちゅい笑ぇー(一人笑い)をする時もあるので、周囲に目配りしながら読むことを勧める。窮地に追い込まれた時でも笑うゆとりを忘れず、放心する応援歌でもある。(ローゼル川田・県現代俳句協会会員)