辺野古の埋め立て承認撤回に向けての「聴聞」に関し、沖縄防衛局が期日を1カ月近く遅らせるよう求めてきた。

 その狙いが撤回前の土砂投入にあることは明らかだ。聴聞を延期してほしいというのなら、土砂投入を凍結すべきである。

 翁長雄志知事の埋め立て承認撤回表明を受け、県は国から意見を聞く聴聞を今月9日に実施すると、先月31日、防衛局に伝達していた。これに対し「少なくとも1カ月程度は準備期間が必要だ」として、9月3日以降とするよう変更申出書を提出したのだ。

 行政手続法による聴聞は、行政庁が許認可を取り消すなど不利益処分をする際、対象者から意見を聞くもので、伝達から聴聞まで「相当な期間をおく」と規定している。

 県は「相当な期間」を1~2週間とし、防衛局が今月17日にも予定する土砂投入前に撤回に踏み切る方針だった。

 思い出してほしいのは2015年、県が埋め立て承認を取り消した際の聴聞を防衛局が欠席したことだ。だが今回、県が産業廃棄物処理業者に対する聴聞で3週間後とした期日を、業者の申し立てにより約1カ月後に変更した例を挙げ、「均衡を失している」と指摘する。聴聞から「逃げた」という印象を回避しながら、埋め立ての既成事実化を急いでいるのだろう。

 申出書には、承認が撤回されれば工事費などに支出された928億円が「全くの無駄金になる」との記述もある。県民の反対を押し切って工事を強行しながら、どう喝するような言いぶりだ。

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 辺野古・大浦湾一帯は、琉球列島に広がるサンゴ礁生態系の中でも、生物多様性が豊かな場所である。この地域ではジュゴンなど絶滅危惧種262種を含む5300種以上の生物が確認されており、その数は世界自然遺産に登録された知床を上回る。

 東清二琉大名誉教授が、専門家の助言を得るために防衛局が設置した環境監視等委員会の副委員長を辞したのは、この委員会では環境は守れないとの理由からだった。 

 工事着手後、大浦湾ではジュゴンの食み跡が確認されなくなり、「個体C」と名付けられた1頭の情報も途絶えたままだ。

 サンゴの移植についても、専門家からは効果を疑問視する声が上がっている。

 一度破壊された自然を取り戻すのは難しく、このまま土砂が投入されれば原状回復は不可能となる。

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 県は沖縄防衛局の環境影響評価書で示された環境保全措置では「生活及び自然環境の保全を図ることは不可能」と断じていた。その後、防衛局は補正評価書を再提出したが、自然保護団体は補正によっても環境保全は困難だとの厳しい見方を崩していない。

 繰り返すが、海が埋め立てられれば、原状回復は困難となる。数々の疑問を抱えたまま土砂投入を強行しようとする姿勢は、暴挙に等しい。

 普天間飛行場にない機能を備えた恒久的施設として建設される新基地は、負担軽減とは裏腹に海兵隊の「焼け太り」を招く結果となっている。