子どもの貧困対策の視点から、母子世帯の貧困防止の砦(とりで)となる「母子生活支援施設」の増設を求める声が高まっている。

 かつて母子寮という名で呼ばれていたこの施設は、経済的に立ち行かなくなったり、夫の暴力から逃れたりした母子が暮らす児童福祉法に基づく施設だ。

 児童福祉施設でありながら母親も一緒に入所できる特性を生かし、就労や子育て、学習支援、心のケアなどに取り組み、母と子の自立を後押ししている。

 子どもの貧困の現状を把握しようと翁長雄志知事が27日、県内に三つある母子生活支援施設の一つ「那覇市母子生活支援センターさくら」を視察した。

 現在、さくらには定員いっぱいの20世帯54人が入所。夫からの暴力を理由とする入所が65%と全国より15ポイント以上も高く、母親の半数が10代で出産しているのが特徴的という。

 當眞郁子施設長が近年の傾向として指摘するのは、母親の65%が母子家庭で育つなど「世代間連鎖の明確化」と、料理ができない、子育ての基本が分からないといった「養育能力の低下」である。

 さくらでは学習ボランティアの協力を得ながら、入所する子どもの高校進学に力を入れている。最初から高校には行かない、あるいは行けないと考えている子が多いからだ。

 母親を支えながら、子どもの育ちを保障する取り組みは、貧困や虐待の連鎖を断ち切る有効な支援となっている。

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 母子生活支援施設は2014年10月時点で全国に243カ所。県内は那覇市のほか、浦添市と沖縄市に開設されている。

 児童福祉法は戦後間もなく1947年に制定されるが、沖縄に母子生活支援施設ができたのは復帰後のことである。

 子どもが安心して育つ場である施設整備の遅れと、3人に1人という深刻な子どもの貧困は無関係ではない。

 4月にスタートした県子どもの貧困対策計画には、ひとり親家庭への自立支援として「母子生活支援施設の設置促進」が盛り込まれている。

 母子世帯割合が全国一高く、ひとり親家庭の相対的貧困率が6割近くに上り、10万人当たりのDV相談件数が全国3位という状況を考えれば、母子生活支援施設が県内に3カ所しかないというのは心細い。

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 翁長知事との懇談で當眞施設長が要望したのは、増えるニーズに対応するため、民間アパートなどを利用したサテライト型(小規模分園型)施設の整備である。 

 支援の必要度合いによって、母子生活支援施設とサテライト型に分ければ、制度からこぼれ落ちる人を救うことができる。

 県ひとり親世帯等実態調査によると、母子世帯の母親の年間就労収入は155万円。シングルマザー向けに家賃負担が少なく、子育てを支え合うシェアハウスという選択肢も用意したい。