1945年8月6日、広島に原子爆弾が投下され、強烈な爆風、熱線、放射線によって街は一瞬にして壊滅した。あれから、73年。広島はきょう原爆の日を迎える。

 被爆者の平均年齢は82歳を超える。高齢化が進み、体験を語れる人がますます少なくなってきた。

 原爆の巨大な破壊力や非人道性を機会あるごとに語り続け、核廃絶を粘り強く訴えてきたのは被爆者である。

 昨年7月に国連で採択された核兵器禁止条約は前文でうたっている。

 「核兵器使用の犠牲者(ヒバクシャ)と核兵器実験の被害者にもたらされた受け入れがたい苦痛と被害を心にとめる」

 だが、唯一の戦争被爆国である日本の政府は、核保有国が参加しない核禁条約に冷淡で、会議に参加せず署名もせず、背中を向け続ける。

 昨年、広島での式典に出席した安倍晋三首相は、あいさつで条約には一切触れなかった。実効性がないとの理由からだ。

 3日後の8月9日、長崎の式典でも条約に触れず、無視を決めこんだ。被爆者代表が安倍首相に詰め寄り、怒りをぶちまけた。「あなたはどこの国の総理ですか」

 共同通信が6月から7月にかけて、全国各地の被爆者を対象に実施したアンケートでは「日本政府は条約に参加すべきだ」との回答が8割にのぼっている。

 核廃絶をめざす被爆者の声は、世界には届くのに、足元の政府には届かない。

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 日本政府は、核保有国と非核保有国の「橋渡しをしたい」と言い続けてきた。

 ノーベル平和賞を受賞した核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)と連携し、英語で被爆証言を続けるサーロー節子さんは反論する。

 「ノーベル賞受賞後も、日本政府からはお祝いの電話の一本もない」「私たちと話をせずに何が橋渡しなのか」

 何よりも問題なのは、「核の傘」に対する依存度を低減するのではなく逆に深め、水面下の交渉では、核の積極的肯定とも取れるような発言をしていることだ。

 トランプ政権が打ち出した新たな核戦略指針「核体制の見直し(NPR)」は、使える小型核の開発・配備を提唱し、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准に反対の姿勢を示している。

 いち早くこれに反応し「NPRを高く評価する」との談話を発表したのは河野太郎外相である。

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 米国のオバマ前大統領は任期中、核軍縮を進めるため「核の先制不使用宣言」を検討したが、日本などが反対し、取りやめになった。

 2009年、「核体制の見直し」に伴う米議会での意見聴取の際、秋葉剛男公使(現外務事務次官)は、沖縄への核貯蔵庫建設について肯定的な見解を示した、とされる。

 外務省はこの会合に関する記録を公表していない。

 日本政府は「核の傘」を重視するあまり、核廃絶に向けた対応があまりにも硬直的で、核廃絶に熱心な国際NGOの信用さえ失いつつある。