【熊本県で浦崎直己】「大丈夫でしたか」「また来週来ますね」-。熊本県阿蘇市などで訪問歯科診療する「阿蘇きずな歯科医院」の我那覇生純院長(50)=熊本県合志市、那覇市出身=は連日、甚大な被害があった南阿蘇村や阿蘇市の高齢者福祉施設や障がい者福祉施設などを訪ね、支援物資を届けて歯の検診に取り組んでいる。28日に同行取材した。

「よく頑張ってる。もう少し」と声を掛けながら治療にあたる我那覇生純さん=28日、熊本県阿蘇郡の高齢者福祉施設

 阿蘇山の麓集落をつなぐ基幹道路は1周約65キロ。治療器材や口腔(こうくう)ケアの物資を積んだ車を運転、地震でひび割れた道を走り、土砂崩れで通れなくなった道や崩落した阿蘇大橋を迂回(うかい)する。午前中には高齢者福祉施設5カ所を巡回。「足りない物はないですか」と声を掛け、洗口液など手渡した。歯を痛めた患者の治療では、その場で抜歯を決め、歯を2本抜いた。

 熊本地震発生から2週間。「気が張っているからか、疲れはない。まだまだ大丈夫」と話す。

 阿蘇きずな歯科医院は開院して10年。現在は近隣5市町村の病院や福祉施設、患者宅を巡り、通院が難しい患者たち約300人の歯の健康を守る。

 本震の翌日の17日から患者の元を駆け回った。全員が無事だったが、断水が続く施設もあり、厳しい状況が続く。医療設備が被災し、福岡や鹿児島の医療機関へ転院した患者も多い。

 安否確認や物資支援は訪問診療で患者の居場所が分かっていたからこそできた。「絆があったからこそ、すぐに支援できた。10年間やってきてよかった」と振り返る。「復興には時間がかかる。地域に寄り添いながら、阿蘇を離れた患者を待ちたい」と語った。