辺野古新基地建設問題で、沖縄防衛局はきのう、立ち入り制限区域を示すフロート(浮具)やオイルフェンスの撤去作業を始めた。数週間かかる見通し。当然であり、遅いくらいだ。

 国が知事を訴えた代執行訴訟は福岡高裁那覇支部で3月、双方の和解が成立し、「埋め立て工事を直ちに中止する」ことが和解条項に盛り込まれた。

 国と県が当事者となっていた三つの訴訟はすべて取り下げられ、辺野古新基地問題は、翁長雄志知事が前知事の埋め立て承認を取り消した2015年10月の時点に戻っている。翁長知事の取り消しの効力が復活し、国は新基地を建設するための法的根拠を失っているのである。

 4月14日、首相官邸で開かれた「政府・沖縄県協議会」の作業部会でも政府は撤去の方向性を示していたが、新基地に関連するのはフロートだけではない。

 埋め立て工事を直ちに中止するという和解条項の精神にのっとれば、現場海域に居座る大型作業台船、フロートなどを固定するため海中に投下されている大型ブロックも回収しなければならない。

 工事に着手する前の状態に戻すのが筋である。

 問題は海面のフロートなどが撤去されても、海の基地ともいえる「臨時制限区域」が依然として存続することだ。

 臨時制限区域は「工事のため」に「臨時的に」設定されたものだ。翁長知事による埋め立て承認取り消しの効力が復活していることを考えれば、これもまた、設定した根拠がなくなっている。臨時制限区域も直ちに撤廃すべきだ。

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 そもそも臨時制限区域の設定は当初から多くの問題をはらんでいた。

 米軍基地の使用条件を定めた日米の合意文書「5・15メモ」では、辺野古沖は陸から50メートル以内の第1水域のみが「陸上施設の保安のため」常時立ち入り禁止だった。

 前知事が埋め立て承認した後の14年6月の日米合同委員会で、沿岸から最大で2・3キロまで広げ、新基地を大きく取り囲むように立ち入り禁止区域を約561・8ヘクタールに大幅に拡大した。

 日米地位協定に基づく日本政府による共同使用を根拠にしているが、米軍の運用とは直接関係のない新基地建設の埋め立て工事のために、臨時制限区域を拡大するのはおかしなことだ。

 最も影響を受ける地元の意思などお構いなし。まさに「海上の銃剣とブルドーザー」(翁長知事)である。

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 和解合意に基づく手続きで、新基地の工事中断は1年に及ぶとみられる。

 福岡高裁那覇支部の和解勧告文は「沖縄を含めオールジャパンで最善の解決策を合意して、米国に協力を求めるべきである」といっている。

 沖縄頼みの安全保障体制から脱し、「米国従属外交」を根本から見直す。そんな新しい日米関係をつくるチャンスと読むことができる。

 だが、安倍晋三首相は和解合意後も、「辺野古が唯一」と繰り返す。思考停止というほかない。