熊本地震発生後、日本国憲法が被災者支援を阻害した場面があっただろうか。最初の震度7が起きた翌日の4月15日、菅義偉官房長官が地震を踏まえ、「緊急事態条項」を改憲して新設する必要性を述べた

 ▼被災地は余震が続き、予断を許さない。だがこの間、首相に権限を集中させ、全国民を従わせなければ災害対応できないような事態は起きていない

 ▼〈地震の後には戦争がやってくる。軍隊を持ちたい政治家がTVででかい事を言い始めてる〉。7年前の5月2日に亡くなったロック歌手の忌野清志郎さんは、エッセー集「瀕死(ひんし)の双六(すごろく)問屋」(小学館文庫)でこう記した。執筆は阪神大震災から5年後の2000年

 ▼自民党は東日本大震災後の12年、憲法改正草案に緊急事態条項を盛り込んだ。これを改憲の突破口にし、9条を改める計画だ。惨事や災害に乗じる権力に気を付けろ-。清志郎の警鐘は今、リアルに響く

 ▼エッセーでは9条を〈戦争を放棄して世界の平和のためにがんばるって言ってるんだぜ〉とたたえる。争いのない世界を想像しようと歌う「イマジン」になぞらえ〈俺達はジョン・レノンみたいじゃないか〉とも

 ▼安倍晋三首相が「みっともない」と見下す9条を、清志郎は「かっこいい」と誇った。存在が揺らぐ憲法の記念日に条文を読み、理想の未来を想像してみる。(磯野直)