沖縄県八重瀬町当銘の「菊みそ加工所 夢工房」は一見、現代風の洋菓子店だが、ケーキのショーケース横に生みそを置いている。「うちはおしゃれなみそ店なんですよ」と笑う店主の平安名陽子さん(51)が、母・永山菊江さん(82)譲りの製法で手作り。4カ月がかりの仕込みでできる自家製の麹(こうじ)と国産の米、大豆、県産の塩を素材に、食品添加物を一切加えない、体に優しい逸品を直売している。(南部報道部・堀川幸太郎)

母譲りの手作りみそを守りたいと語る「菊みそ加工所 夢工房」店主の平安名陽子さん=4月30日、八重瀬町当銘の同店

 みそ汁にすると滑らかに溶け込むみそは、塩も控えめの甘み引き立つこく深い味。溶け残りがないのは、母が病院食に卸した際に栄養を取りやすくするため米と大豆を合わせて2度すりつぶしていたから。うま味を引き出す温度管理も母譲りの企業秘密だ。

 菊江さんは結婚後、20代でみそ造りを始めた。評判の味で地元で指導員を務めた後、1987年に加工所を設立。既に結婚し共働きだった娘の陽子さんは休日に仕込みを手伝い、学校食や病院食として体に気を配った製法を間近で見てきた。

 陽子さんが本格的に加工所を継いだのは2005年、70歳を超えた母が病で約2年間寝込んだとき。だが見るのとやるのとは違うと痛感。教えを請うた母が病床から分刻みで工程を伝える姿に、子どものころから親しんだ味を守りたいとの思いが強まった。

 さらに町商工会の依頼で地元産のオクラや紅芋、みそを使ったシフォンケーキを作ると、口コミで町外からも買い求めに来る人が増え売り上げも伸びた。客の9割以上はケーキ目当てでも、母の名を冠した愛着のある「菊みそ」を看板から外す気はない。

 生みそは無添加のため発酵が進み、二酸化炭素で容器が膨らむことから、小まめに手入れできる店頭販売に限っている。陽子さんは「10代のときはうるさく感じたほど、健康への気遣いがあふれた母の味。昔ながらの造り方を伝えたい」と話している。

 「菊みそ加工所 夢工房」は町当銘254。営業は午前10時~午後7時。毎月2日と第3日曜が休み。みその手作り体験教室もある。電話098(998)0219。