入居者に介護サービスなどを提供していながら自治体に届け出ていない「無届け有料老人ホーム」が昨年度、全国で1627カ所あり、少なくとも1万5209人が入居していたことが共同通信の調べで分かった。沖縄は48カ所、462人だった。

 無届けだと行政の指導・監督が行き届かず、入居者が劣悪な環境に置かれる恐れがある。厚生労働省は2006年度、入居者10人以上としていた有料老人ホームの規定を見直した。高齢者を入居させ食事や介護サービスを提供する施設すべてを有料老人ホームとみなし、自治体への届け出を義務付けている。

 あれから10年、無届けホームの数は、厚労省が調査を始めた09年度以降で最多となった。一方で規制は進まない。老人福祉法では、無届けでサービスを提供すれば「30万円以下の罰金」と定めるが、全国での摘発例はほとんどない。沖縄もゼロだ。

 無届けホームの中には、部屋の広さや安全性、職員数など国が定めた基準を満たさない代わりに、安い利用料で高齢者を受け入れている所がある。認知症や障がい、貧困、身寄りがない-など困窮高齢者の入居が多いと推測され、そのため劣悪な環境下にあっても声を上げられない危険性もある。

 こうした実態の放置は時に高齢者の命を危険にさらすが、行政による指導はこの間、施設数や入居者数の把握にとどまっている。高齢者の人権を守る観点から、入居者へのサービスの提供状況、利用実態について具体的な把握を急ぐべきだ。

■    ■

 高齢者対象の民間施設は1980年代、自宅に閉じこもりがちな高齢者に集いの場や健康的な食を提供する「宅老所」として始まった。

 2000年の介護保険導入以降は、公的介護事業と自主事業を組み合わせる形態が増加。公的制度の隙間を埋める形で、高齢者が地域で暮らすための実際的なニーズに寄り添ってきた経緯がある。

 届け出制の導入以降、これら宅老所の多くは有料老人ホームへと移行した。しかし無届けホームはその後も増え続けている。長期入院できる療養病床(病院)の削減や、特別養護老人ホーム(特養)など入所型介護施設の圧倒的な不足を背景に、数を伸ばしている可能性がある。

 身寄りがなかったり、経済的に困窮する高齢者を自治体が入所させる養護老人ホーム(養護)の利用に、財政的負担から自治体が消極的になっていることも一因だろう。

■    ■

 療養病床・特養・養護の共通点は、医療・介護・福祉の公的制度を用いて高齢者が低料金で入所でき、社会サービスを利用できる点にある。

 しかし例えば特養は、昨年4月から入所対象者を原則、要介護3以上に限っている。社会保障制度改革の名の下で、公的制度は年々、減少・制限されているのが実情だ。

 無届けホームの増加と、これら公的制度の変化は無関係ではないはずだ。

 行政は、無届けホームが増える理由にも目を向ける必要がある。