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  • トランプ氏の指名確実は米政治の「病める現実」を浮き彫りにした
  • 氏がアジア情勢や米軍基地維持経費など実情を知っているか疑問だ
  • 基地負担を沖縄に押しつけて万事安泰とする時代は終わりつつある

 党内の亀裂は深刻である。本選になっても一致団結する気配はない。ひょっとしたら共和党は組織を修復することができず瓦解(がかい)状態に陥るかもしれない。

 米大統領選で不動産王のドナルド・トランプ氏が共和党の指名を確実にした。

 大統領候補指名争いでトランプ氏は、「メキシコ国境に万里の長城を築く」「安全が確保できるまでイスラム教徒は入国禁止」などと、露骨な移民排斥論をぶち上げ、国内外から強い批判を浴びた。

 オバマ大統領やローマ法王、共和党重鎮、米有力紙などが相次いでトランプ氏の政治姿勢を批判。党内にも「反トランプ陣営」が形成された。

 だが、結果は、共和党内の主流派が総崩れし、昨年6月の出馬宣言の時点では泡沫(ほうまつ)候補としか見られていなかったアウトサイダーに軍配が上がったのである。

 経済格差、テロの脅威、既存支配層への反発。将来を不安視する白人低所得層などの不満を巧みにすくい上げた結果だといわれる。

 どんなに事実誤認に満ちた無責任な発言であっても、それがある社会層の不満や不安をストレートに代弁しているのであれば、強い米国の復活を唱える巧みな演説やメディアを駆使した戦術によって旋風を巻き起こすことができる-アメリカ政治の「病める現実」を浮き彫りにしたともいえる。

 政策の中身を吟味しない扇動型政治は国内の分裂を深めるだけでなく、国際社会にも重大な影響を与えずにはおかない。

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 トランプ氏は、安全保障について「同盟国は応分の負担をしていない」と述べ、米軍駐留費の負担増を日本側に求めるとともに、増額に応じない場合、米軍撤収もあり得るとの見方を示した。

 日韓の核保有を容認する姿勢も明らかにしている。

 日本の核保有は東アジアの安全保障に深刻な影響を与えるだけでなく、被爆国日本の国是にも反する。そのことにトランプ氏はまったく気づいていない。

 政府は民有地や公有地を借り上げ、基地として土地を無償提供しているだけでなく、日米地位協定によって本来、米軍が負担すべき維持的経費についても毎年、高額の負担をしている。

 かつて米軍高官が米議会で「米軍は本国に置くより日本においた方が安上がり」だと発言したことがあるが、日本は他のどの国よりも気前のいい受け入れ国になっているのである。

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 在日米軍基地は、ベトナム戦争、湾岸戦争、イラク戦争など日本防衛と関係のない戦争に使われてきた。「海兵隊は日本防衛のためではない」と発言した米軍高官もいる。

 トランプ氏は在日米軍基地をめぐるこのような実情をご存知なのだろうか。

 ただ、これを機会にまっとうな負担論議が日米双方で起きるのは悪いことではない。

 米国への従属と米軍の永久的駐留に何の疑問も持たず、基地負担を沖縄に押しつけておけば万事安泰と考え思考停止する。そんな時代は終わりつつある。