国土交通省や総務省など多くの中央省庁が、法律で義務付けられた障がい者の雇用率を水増ししていたことが分かった。「調査中」の省庁を除き、農林水産省が事実関係を新たに認めている。

 信じられないのは、障がい者の雇用が義務化された1976年から42年の長きにわたって続いてきたことだ。

 障がい者への差別をなくし、障がい者雇用を促進する立場にある中央省庁の重大な裏切りであり、恥ずべき不正行為である。

 障害者雇用促進法に基づく「障害者雇用率制度」では、企業や公的機関に一定割合以上の障がい者を雇うよう義務付けている。

 原則として手帳や判定書を所持する人が対象だが、今回の水増しは手帳などが交付されない比較的障がいの程度が軽い職員らを合算する手法で雇用率を上げていた。

 民間企業に対しては法定雇用率が達成できなければペナルティーとして納付金が課され、企業名が公表されたりする。民間には厳しい法令順守を求めながら自らは偽装までしていた。言語道断である。

 法定雇用率は段階的に引き上げられ、現在、国・自治体が2・5%、民間企業が2・2%。21年3月末までにはそれぞれ2・6%、2・3%にアップされる方針だ。

 国や自治体が民間に比べ高いのは、率先して範を垂れる意味が込められている。

 昨年6月時点で、国の33行政機関の平均雇用率は2・49%だった。32機関で当時の目標の2・3%をクリアしていたことになっていた。しかし、ウソの報告が発覚し、実際の雇用率は1%未満になる省庁が多いとみられる。まさに偽装したのである。

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 なぜ不正行為であると分かっていながら水増しが長年にわたって、しかも省庁横断的に行われてきたのか。各省庁で長年引き継がれた手法なのか。多くの省庁に広がったのはなぜか。

 障がい者の雇用率を巡っては2014年、厚労省所管の独立行政法人が雇用率を水増しして虚偽報告をした。厚労省が告発し、法人と元幹部3人が罰金の略式命令を受けた。だが厚労省はこの際、中央省庁に対する調査をしなかった。おざなりな対応のために水増しの常態化が続いたといわれても仕方がない。

 厚労省は自らも例外とせず、全省庁の実態調査を徹底しなければならない。

 先の多くの疑問に対し、厚労省は調査の結果を速やかに公表してもらいたい。野党が求めている国会の閉会中審査にも応じ、全容解明に乗り出すべきだ。

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 障害者雇用促進法は雇用に当たって障がい者であることを理由にした差別的取り扱いを禁じている。安倍政権が旗を振る「1億総活躍プラン」には「共生社会の実現」が盛り込まれている。

 障がい者の雇用率の引き上げはこの理念の実現に不可欠だ。障がいのある人もない人も共に生きる「共生」の考えはこれからの社会が目指すべき方向である。

 中央省庁のウソの報告はそれに水を差した。