那覇市出身、ロサンゼルス市在住のキム(旧姓上地)一美さんが2016年4月、80歳を迎える年に亡くなった。一美さんは沖縄タイムスの元社長・上地一史さんの長女で、同市内で美容院を経営し国籍や人種を問わず多くの人に慕われた方だった。(ロサンゼルス通信員・福田恵子)

2012年、ビバリーヒルズの「カブキビューティーサロン」で、前北米県人会長の当銘氏と一緒のキム一美さん(左)

 琉球大学を卒業後、1960年にカンザス大学の大学院に留学した一美さんは大学院で出会った韓国の留学生ヘンリー・キムさんと結婚。ロサンゼルスに移り住み、夫のすすめで美容院の経営に乗り出した。

 前北米沖縄県人会長、当銘由洋さんの紹介で一美さんが経営するビバリーヒルズの「カブキ ビューティーサロン」で彼女と初めて会った。2012年当時、一美さんは76歳だったが年齢より若く見え、はつらつとしていた。

 「ヘンリーに半ば強制的に経営をすすめられ、当初は嫌々だったけど今は感謝している。一緒に働く仲間やお客さんとの交流が私の生きがい」と若さの秘訣(ひけつ)をそう語った。

 ヘンリーさんが他界後、一美さんにとって美容院はより一層、大切な居場所になった。そこには日本人、日系人、白人、アジア系アメリカ人、さまざまなバックグラウンドを持つ人々が美容師やエステティシャンとして働いていた。そして皆、一美さんを慕っていることがよくわかった。長年の常連客が体調を崩し、予約をキャンセルする電話が入ると「私にできることがあれば何でも言って」と伝えていた。彼女にとっては顧客も家族のような存在だった。

 好奇心旺盛で、新しくできたレストランを目指し、町中を一人闊歩(かっぽ)する姿を見かけたこともあった。「80歳を前に引退する」と話していた一美さんは15年夏、ダウンタウン近くのシニア向けコンドミニアムに転居。だが体調を崩し、16年4月、自宅に戻り姪一家と暮らし始めた。

 4月11日に電話すると「会いたいわ」と言われたが、その後何度かかけた電話に一美さんが出ることはなかった。あの日のうちに訪ねて行けば、と後悔したが、一美さんの人生の最後の数年間にわずかでも交流できたことを心から光栄に思っている。優しく美しく好奇心旺盛だったキム一美さん、安らかにお休みください。