資源ごみに出した缶や古新聞が、収集時間の前になくなる。でも、どうせ捨てた物だし、リサイクルはされるし、困っている人の生活の足しにもなるし。そうやり過ごすのは甘いだろうか

▼持ち去り禁止の条例がある那覇市には昨年度、過去最多95件の苦情があった。「怖い」「散らかる」「仕分けの音がうるさい」。目撃した時間や場所、車のナンバーも通報がある

▼市は警察官OB2人を採用し、早朝パトロールをする。寄せられる情報も使って、現場で292人を指導した。大半が60歳以上の男性。やはり生活が苦しい人が多いという。「生活保護などの支援が筋」と、相談窓口を紹介している

▼一方で指導、勧告、命令に従わなかった人には条例に基づく過料1万円を科した。昨年度1年間で3人、計5回。いずれも本土のような大規模事業者ではなく個人だった。暗黙のうちにほそぼそと成立してきた稼業が、県内で初めて罰された

▼低成長が続くこの国では、他者が少しでも得することを許せない「負の横並び意識」が強まっているようだ。皆が潔癖な正しさを主張し、社会の寛容さが細っていく。95件の苦情がその表れでなければよいと思う

▼厳密に言うと95件のうち2件だけは苦情ではなかった。逆に、「困っている人を取り締まらないでほしい」という声だったそうだ。(阿部岳)