仕事のストレスが原因で、うつ病など「心の病」を発症する介護職員が増えている。

 厚生労働省の集計によると、介護労働者を中心とした「社会保険・社会福祉・介護事業」の精神疾患による労災申請は2014年度、140人。そのうち32人が労災認定を受けた。

 09年度と比較すると申請は2倍、認定は3倍以上に増えている。業種別では最も多い申請で、認定件数も2番目に高い。

 慢性的に人手不足が指摘される業界である。長時間の残業や不規則な交代制勤務などが、心の病の背景にあることは容易に想像できる。

 介護労働安定センターが実施する2014年度介護労働実態調査で、働く上での悩みや不安、不満を複数回答で聞いたところ、半数近くが「人手が足りない」と答えていた。「仕事内容のわりに賃金が低い」が4割強、「身体的負担が大きい」「精神的にきつい」との回答もそれぞれ3割ほどあった。

 厳しい労働環境が伝わってくる調査結果だ。

 人手不足から夜勤が増え夜中にコールボタンが鳴りやまない、認知症に付随して起こる暴言に傷つけられたなどというのは、よく耳にする話である。最近は家族からの過剰な要求に振り回されるケースも多いと聞く。

 お年寄りの人生を支えるやりがいのある仕事だと思って就職したのに、過重労働、低賃金に加え、命を預かる責任感、常に相手に合わせた言葉や態度が求められる「感情労働」特有の緊張感がストレスを押し上げている。

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 熊本地震で、高齢者や障がい者に専門のケアを提供する「福祉避難所」が機能しなかった理由の一つが、介護現場の人手不足だった。

 福祉避難所に指定された高齢者福祉施設は、もともとの入所者の世話で手いっぱいで、入所者以外の要支援者を受け入れることが難しかったのだ。

 ことし1月、厚労省は介護を担う人材が20年代初頭に約25万人不足するとの推計を公表した。これまでより不足数が5万人も拡大している。

 25年には団塊の世代が全て75歳以上となり、要介護認定を受ける人も604万人に増える。高齢化に伴い、介護需要は爆発的に増えていく。

 すでに深刻な介護現場の人手不足といった課題へ、どのような策が打ち出せるか。今まさに重要な局面に差し掛かっている。

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 政府は近くまとめる1億総活躍プランに、介護職の給与を月1万円程度引き上げることを盛り込む方針という。

 処遇改善策の一つとはいえ、全産業平均より10万円も低い月収格差を埋めるには不十分だ。加えて総活躍プランは夏の参院選を意識した政策で財源の裏付けがなく、口約束で終わる可能性がある。

 職場の多忙感の改善には、人を増やすことが不可欠だ。優秀な人材の確保には、報酬アップが欠かせない。

 高齢者介護という尊い仕事に見合った賃金体系を確立する必要がある。