那覇市天久地域の歴史を約30年間、独自で調べ、手書きでつづってきた翁長精一さんの研究成果がまとめられ、「旧天久村の民俗誌」として6月に出版される。昨年12月に費用捻出のため、孫の駿次さんが資金提供を呼び掛けた本紙報道をきっかけに協力が相次ぎ、目標金額が集まった。駿次さんが編集を進める中、精一さんは体調を崩し、4月に急逝。駿次さんは「祖父の研究を役立ててほしい」と遺志を受け継ぎ、出版作業に取り組む。(政経部・照屋剛志)

故翁長精一さんがまとめ、6月に出版予定の「旧天久村の民俗誌」を持つ孫の駿次さん=9日、那覇市天久の自宅

翁長精一さん

故翁長精一さんがまとめ、6月に出版予定の「旧天久村の民俗誌」を持つ孫の駿次さん=9日、那覇市天久の自宅 翁長精一さん

 精一さんは「生まれ育った天久の歴史を後世に伝えたい」と1987年から、研究を始めた。天久の先輩方から口承で伝わる歴史や風習などを聞き取り調査。文献や古書も取り寄せ、研究に没頭した。

 研究成果は3500年前の縄文時代から現代にまで及び、手書きでまとめた原稿は350枚にものぼる。費用が高額で出版を諦めていたが、IT企業を経営する駿次さんが昨年12月にウェブを活用した資金集めに乗り出した。

 本紙報道を受け、天久に住んでいたという人や研究に共感する人などから資金提供があり、今年2月に出版のめどが立った。精一さんは「これだけ応援してもらえるとは」と感謝していたという。

 手書き原稿からパソコンへの入力を駿次さんの会社が請け負い、従業員と3人がかりで取り組んだ。たが、難しい固有名詞や歴史背景があり、脚注を入れるなどの作業は難航。歴史書を調べたり、精一さんに確認したりして乗り切った。

 3月下旬、精一さんが肺炎で入院。駿次さんが入力した文書を届ける度に喜び、「いつできるかな」と完成を心待ちにしていたという。

 パソコン入力が順調に進んでいた4月16日、病状が悪化し精一さんは息を引き取った。駿次さんは「完成した本をみせられず残念」と悔しがる。翌17日、パソコン入力が3カ月がかりで終了した。

 出版は6月末を予定。完成した200冊は教育機関などに無償提供する。駿次さんは「祖父の集大成の手伝いができて良かった。本として形になり祖父も喜んでいると思う」と話した。