私たちは、我が目を疑うような信じ難い光景に出くわした時、「夢か現か幻か?」と言う表現をよく使います。

イラスト・いらすとや

 夢は、誰もが経験することで周知のことですが、幻覚はというと、経験した人は少ないものと思われます。

 しかし、砂漠や富山湾での蜃気楼(しんきろう)、あるいは逃げ水等は、誰もが経験しうる幻視で、幻覚症状はそれらの知識から推察可能です。夏の風物詩である怪談話も、幻覚、錯覚体験が基になっていることが多いと思われます。

 あたかも気の弱い人が今にも幽霊が出るんじゃないかと思いながら暗い夜道を歩いていて、白いハンカチが木にぶら下がっているのを見て、幽霊の顔に見えたりするようなものです。

 幻覚や妄想等で苦しめられる病気では、何といっても統合失調症が多いです。その症状の多くは被害妄想です。

 人間関係のもつれから、疑心暗鬼となり、ついには被害妄想に発展することも少なくありません。

 また、自己のささいな欠点や失敗を気にするあまり、他人の目を過剰に意識して、悪口を言われているのではないかと神経過敏となり、周囲の高笑いや刺激的な言葉を自分にあてつけているのではないかと疑い始めます。そして、やがてそれを確信するようになるのです。

 このような注察的、被害的思考パターンが習慣化すると、訂正はなかなか困難です。始めは特定の人に抱いていた被害妄想もやがて知人、友人、家族等と被害妄想の対象は広がっていき、後は誰も信じられなくなり、引きこもりがちになっていきます。

 それでも幻覚妄想が凝り固まらない早期のうちに家族が異常に気づき、専門病院を受診し、適当な治療を受けることで、軽快する人も多くいます。

 ただ、残念なことに幻覚妄想に対する知識が乏しいと、それを神ダーリ(神がかり)と周囲がみなして、ユタ通いをして治療が手遅れになることも多いです。どんな病気も早期発見、早期治療が大切です。(仲本政雄 博愛病院)