同じ映画を劇場で2度見ることはめったにないが、この作品は、そうせずにはいられなかった。出演俳優は無名。300万円の低予算で、撮影期間は8日間。売れる要素は見当たらない

▼映画「カメラを止めるな!」は、監督・俳優の養成学校のENBUゼミナール(東京)がワークショップで製作。もともと興行目的ではなかった

▼映画は、いきなり37分間のノーカットシーンから始まる。山奥の廃虚でゾンビ映画の撮影隊に本物のゾンビが襲いかかる、と書くとおどろおどろしいが、作品の前半と後半で趣は一変する

▼6月に都内の二つの映画館で公開されるや、じわじわ評判が広まり、今や全国250館に拡大。沖縄でも8月末から上映され、わずか2週間で観客3千人超を動員した。もはや社会現象と言っていい

▼経済専門誌ではマーケティングの視点で分析する記事も見かける。入念に戦略を練った娯楽大作が苦戦する中、全く度外視した異色のサクセスストーリーに胸がすく

▼張り巡らせた伏線が次々と昇華する緻密な脚本はお見事。でも、最も心を揺さぶられるのは、アイデアと情熱で面白いものを生み出そうとするモノづくりのひたむきな姿だ。よし、私も頑張ってみよう。そう思えるはず。妥協を重ねて夢を見失い、日々の生活に疲れた大人たちの背中を押してくれる。(西江昭吾)