沖縄県が県内のがん患者・家族と、医療者を対象にそれぞれ実施した初の大規模調査の結果がこのほどまとまった。6病院で558人が回答した患者調査では、診断時に収入のある仕事をしていたのは全体の4割で、このうち20%超が初めての治療・療養で復職・復帰せずに退職や廃業、または今も継続して休んでいる実態が分かった。がんと診察され、生活に不安を感じた人は71・0%に上り、調査結果を盛り込んだ県がん対策推進計画(第2次)分析報告書では、経済的困難を抱える患者への就労・生活支援体制の整備や雇用創出が重要と指摘した。

県内のがん患者・家族と、医療者を対象にそれぞれ実施した初の大規模調査

 県が琉球大学医学部付属病院がんセンターへ委託し、昨年11月から今年1月にかけて調査した。

 患者に体の苦痛と、気持ちのつらさがあるかをそれぞれ聞いた質問では「思う」と回答した患者は32・5%と32・1%だった一方、医療者調査で精神面を含む痛みの評価を75%以上の患者に実施しているのは4割に満たなかった。勤務する施設で、緩和ケアのレベルが3年前と比べて向上したと思うかとの問いには、25・5%が「思わない」と答え、緩和ケア充実が重要な課題といえる。

 医療機関を移る際、紹介先を支障なく受診できた患者の割合は64・3%で報告書は「低め」と評価、施設間の情報共有や連携の不足も浮き彫りに。

▽医療者「情報不足」

 医療者調査はその問題点がさらに顕著に表れた。医療機関連携が不足していると答えた医療者は63・2%で、患者をより専門的な機関に紹介する際と定期検査先を紹介する場合で、それぞれ56・4%、57%の医療者が情報不足を感じていた。離島の患者が適切な治療を受けていると思わないのは医療者の62・7%で、情報や相談機関が少なく、治療や検査で本島への移動・滞在を余儀なくされる離島の物心両面のハンディも示された。 

 チーム医療体制や希望に沿った医療の提供には、患者の9割が満足感を示す一方、がん専門医の不足を72・9%、医師以外の専門的医療従事者(がん化学療法看護認定看護師、がん薬物療法認定薬剤師など)の不足を80・5%の医療者が感じており、専門職の養成が急務だ。

 また、9割以上の医師が他の医療スタッフの話に耳を傾けていると回答。一方で医師が必要な情報を医療スタッフと共有していると思わない、がんケアに関し医師に自分の意見を自由に言えないと答えた医療者はそれぞれ4人に1人に上り、医師が感じるほど医療者間の意思疎通が円滑でない一端も浮かび上がった。

■治療に専念できる環境を

 県がん診療連携協議会患者委員で看護師の真栄里隆代さん(57)の話 調査には、患者と家族をめぐる就労や経済的負担の課題が表れた。私は宮古島市在住なので離島の実情も理解できる。7年前に乳がんを患い、手術を宮古で、放射線治療を本島で受けたが治療のたびに往復2万5千円の航空運賃がかかり、家族が付き添うとさらに出費が増えた。休職しても安心して治療に専念できる環境、負担軽減策の充実が欠かせない。

 看護師の立場でみれば、日々の業務に追われる医療現場の現実が浮かび、患者の心身の苦痛に余裕を持って向き合わなければならないという思いを新たにした。専門職不足はどこの医療機関も抱える深刻な問題だ。調査は県内初の大規模な取り組みで画期的だが、これで終わらせず、具体的な改善策に乗り出すきっかけにしてほしい。

【患者・家族調査】

 2015年12月~16年1月、琉球大医学部付属、県立中部、那覇市立、県立宮古、県立八重山、北部地区医師会の6病院の協力で実施。558人が回答し、回答率は26・5%。年齢は70~79歳が32・6%で最多、60~69歳27・2%、80歳以上16・1%と続いた。

【医療者調査】

 15年11~12月、患者調査に協力した6病院に加え中部徳洲会、浦添総合、沖縄赤十字、豊見城中央などの病院と5クリニック計20医療機関で2062人が回答。職種は医師19・4%、看護師61・9%、薬剤師8・0%、ソーシャルワーカー3・5%など。回答率は75・7%。