「こんな面白いことはない」。琉球列島に渡った祖先の謎を解き明かすプロジェクトに夢中になっている。「祖先は偉大な航海者だった」との“仮説”に興奮し「その姿をあぶりだしたい」と声を弾ませた。

祖先がたどってきた道を解明するプロジェクトについて語る海部陽介さん=東京・国立科学博物館

 国立科学博物館の人類史研究グループ長。旧石器時代の人類がどのように台湾から渡って来て、われわれのルーツとなったのか-。今夏に本格化する「3万年前の航海徹底再現プロジェクト」を率いている。

 「沖縄は人類学者にとっての聖地ですよ」。石灰岩由来の弱アルカリ性土壌が人骨を守り、3万年以上前の旧石器時代の人骨化石が見つかるため、そう言われるという。

 幼いころから興味があった人類学者を目指し東大に入った。「港川人などは誰でも研究できるものではない、触っていけないもの」。暗黙の雰囲気があり、そう思い込んでいた。そんな沖縄の化石人骨を研究することは夢だった。

 その夢は2007年、県立博物館・美術館に港川人の人骨を移管に関わった際に実現。サキタリ洞など比較的新しい場所も調査したという。

 特にアジアでの人類の進化や拡散の解明が専門で、地図が大好きでもある。今回のプロジェクトも、地図を眺めていてひらめいた。昔、大陸と台湾は地続きで、琉球列島は孤立していた。間に流れる世界最大規模の海流の黒潮を渡るのは簡単ではない。だから自分たちでやってみようと。「脱線好きなんでね」と笑う。

 研究者、探検家ら20人以上で今年は与那国島-西表島間を、来年は台湾-与那国ルートにチャレンジする。それも当時使ったであろう草舟で。

 拠点の与那国の島興しも見据える。「初めて人々が列島に入って来た島。人間の歴史が息づいた島として魅力を高めてほしい」(東京報道部・宮城栄作)

 1969年、東京都生まれ。小さいころから人類進化に興味があり、東京大学、同大学院へ。95年から国立科学博物館に勤務し、2014年に人類史研究グループ長に就いた。父親の宣男さんは天文学者で、ハワイに「すばる」望遠鏡を設置した国立天文台名誉教授。