「われわれの所有の下、沖縄はめざましい進歩を遂げ、多くを得た。この島の住民にどれほど貢献しても見返りの方がずっと大きい」

 ▼ジャン・ユンカーマン監督の映画「沖縄 うりずんの雨」で流れる、米軍が制作した自国向けテレビ番組のナレーション。作られたのは1955年ごろ、映像は嘉手納基地から次々飛び立ち、朝鮮半島に爆弾を大量投下するB29爆撃機

 ▼物資など、米軍占領で沖縄が「得た」ものはあるだろう。同時に、失ったものは数限りない。戦前の経済基盤は沖縄戦で徹底的に破壊され、占領で土地を奪われた結果、基地に依存せざるを得ない構造がつくられた

 ▼沖縄自らが選択した生き方ではない。沖縄戦を生き抜いたのに、生きるために家族を殺したであろう米軍の弾薬を整備する仕事に就く。その弾が新たな犠牲者を生む。人々は、どんな思いで弾を磨いてきたのだろう

 ▼沖縄は今、不条理に満ちた歴史や、米軍の事件・事故におびえる日常との決別を明確に訴えている。そんな中、元海兵隊員が女性の命を奪った。またも凶行を止められなかった

 ▼前述のナレーション、「見返り」とは基地の自由使用を指す。安倍晋三首相と来日するオバマ大統領が「謝罪」したとしても、2人が辺野古新基地建設の推進を確認し、今後も基地との共存を強いるなら、それは沖縄への冒涜(ぼうとく)だ。(磯野直)