認知症でないかと心配され受診する方が増えています。私の外来を受けた初診の方では7割を占めるようになりました。北部の方では、1人暮らしや高齢者2人暮らしの認知症の方の相談が目立つようになりました。

 近所の方から那覇に住む長女に連絡があり、勧められて初めて認知症外来を訪ねた88歳の夫と84歳の妻のお二人のケースを紹介します。

 夫が軽い糖尿病、妻は高血圧が持病でした。磁気共鳴画像装置(MRI)などの検査をしました。夫は脳血管性認知症でした。若い頃はかなりお酒を飲まれる方でしたが10年前からは量は少なめになっています。MRIでは脳梗塞が多発しており前頭葉(ぜんとうよう)が萎縮していました。

 妻の方は、記憶の中枢である側頭葉(そくとうよう)の海馬(かいば)がかなり小さくなっており、道に迷うことが増えるなどの症状と合わせるとアルツハイマー型認知症と診断できました。

 問題は今後の薬の管理でした。妻は、「私には物忘れはない」と述べ薬を拒否しました。夫はニコニコと素直に服薬に同意しました。実は薬のことで困ったのは、高血圧と糖尿病の薬まで妻が拒否することでした。同伴した長女は、「薬を飲むように説得しても反発して怒り出すので困っている」とのことでした。

 2回目の受診のときに、「このままでは夫の方が脳卒中になって倒れかねない」と話してみると妻は真顔になりました。夫の脳梗塞の画像をみせ、「お二人ともきちんと薬を飲んで脳卒中を予防しましょう」と提案すると服薬を納得されたのです。

 3回目の受診には東京から一時帰省した長男が同伴しました。薬は半分しか飲まなかったようです。そこでヘルパーさんに一日おきに来てもらい服薬を確認してもらうようにしました。「服薬の約束」を忘れて服薬しないことが分かったのでこれは効果てきめんでした。

 4回目にはお二人ともきちんと内服されるようになり、デイサービスの職員からもとくに夫が活発になったとの報告が届きました。妻の方も、物忘れが改善したようだと長女がうれしそうに話してくれました。孫の名前を言えるようになったそうです。

 これからこのお二人の暮らしはどうなるのでしょうか。那覇に住む長女は同居を希望していますが、お二人とも「やんばるを離れる気はない」と言っています。2人暮らしができるだけ長く続けられるように、担当医としてサポートしたいと思います。(宮里好一 医療法人タピック宮里病院)