悲惨な女性遺体遺棄事件への抗議の場で、安倍晋三首相はオバマ米大統領へ「辺野古が唯一」との考えを伝えた。事件後、安倍首相は翁長雄志知事と早い段階で面会するなど沖縄の「痛み」に向き合う姿勢をみせた。だが、新基地建設反対や日米地位協定の改定など沖縄の声には一切耳を傾けることはなく、会談を通して見えたのは米国へ追従する安倍政権の姿だった。(政経部・大野亨恭、東京報道部・上地一姫)

 「沖縄の民意や県民に寄り添うことに何ら関心がないということだ」。翁長氏は26日、県庁で記者団に安倍首相の「辺野古が唯一」の発言の感想を問われ、ばっさりと切り捨てた。

 政府関係者によると、首相が「辺野古」に触れたのは、政府として辺野古の方針は何も変わっておらず、「オバマ大統領に説明しない方が米側の不信を招く」との考えからだ。

 防衛省内からは、事件による県民の反発が新基地建設へ波及することを懸念し、今後の裁判で国側が勝訴しても工事再開にこぎ着けるか危惧する声が漏れる。「これまで沖縄で積み上げてきたものは何だったのか」との嘆きも聞こえる。

■街路灯を設置

 このような強い懸念を背景に、事件後の政府の対応は早かった。日米首脳会談は予定を1日前倒して実施、全体会合前の20分間の小人数会合は、全ての時間を遺棄事件に費やした。

 逮捕直後のケネディ駐日米大使への抗議に始まり「さまざまなレベルでの対応に一区切り」ついたが、沖縄の反米感情の広がりを抑えるため、26日には菅義偉官房長官を筆頭に「犯罪抑止対策推進チーム」を結成し、初会合を開いた。

 「できることはすべて行う」と菅氏は8省庁の幹部を前に県民の安全のために連携するよう求めた。だが、会合はわずか6分で終了。中身は、街路灯の設置などの検討-程度だった。

■面談実現せず

 「0・1%進歩したね」。翁長氏は、推進チームの結果を聞かされ、痛烈に皮肉った。「あの娘さんが襲われた状況を見たら、街路灯でどうやって防ぐんだ」

 知事は、こうも指摘した。「これだけの犯罪が何百回起きても、こうした案しか出てこない。これからも沖縄はそういう宿命を背負っていくのか」。知事は、事件に向き合わず、沖縄の声に耳を傾けない政府にいらだちをあらわにした。

 結局、オバマ大統領との面談は実現しないまま、オバマ氏は27日に広島を訪問する。翁長氏は広島訪問の意義を認めた上で、こう強調した。

 「日本の安全保障の中では沖縄の人権、自由、平等を顧みられることはない。そういう日本政府の姿勢だから、沖縄には目が向かない」