政府は、米軍再編計画の進捗(しんちょく)に応じて自治体に支給する「再編交付金」の対象を、都道府県や自治会へも広げる方針を固めた。

 再編交付金の根拠法である時限立法「駐留軍等の再編の円滑な実施に関する特別措置法」は、来年3月に10年の期限が切れる。政府は、法の継続と並行して拡大をねらうが、任意団体である自治会を公金支給の対象とすることは理解しがたい。

 新たに都道府県を交付対象とすることには、米軍再編について県と自治体の意見の相違を浮き彫りにし、地域を分断する意図が見える。(米軍再編に)協力してほしい自治会や市町村、都道府県が受け入れを決断した場合は、補助率を上げるなどの特例も準備しているという。

 それらから推測できるのは、2007年に誕生した再編交付金の「見返り」的側面を、新特措法はより強化する方向であるということだ。

 自治会への交付金を巡っては昨年、新基地建設に関して名護市の辺野古、豊原、久志の3区に上限3900万円、本年度さらに4千万円の直接交付金の支給が決まった経緯がある。

 3区はこれらを米軍人との交流や地域整備などに使用する計画を立てているが、果たしてこれまでに、いくらがどのように使われたのであろうか。

 そもそも自治会には議会など第三者のチェック機能がなく、自治体や都道府県のように納税者が公金の収支を知る仕組みは確立されていない。そのような団体へ多額の公金を支給することは、税法の趣旨を逸脱している。

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 基地に関連する補助金では最近、騒音被害の補償としての公共施設への空調補助の一部打ち切りが問題となっている。対象施設では冷房の使用を控えなければならない可能性もあり、本格的な夏の到来を控え、学校や保育園など子どもたちの健康への影響が懸念されている。

 防衛省は補助金削減の理由に「国の財政難」を挙げ、全国一律であることを強調し理解を求めた。

 しかしその言い分には疑問が残る。なぜなら一方で、工事再開の見込みも不透明な新基地建設への協力に直接交付金を支給し、さらに今回、再編交付金の支給対象を拡大するというのだから。

 あまりにも恣意(しい)的で、不公平で、バランスを欠いた税配分ではないか。

 防衛省の説明は詭弁(きべん)というほかない。

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 空調補助の打ち切りと再編交付金の拡大-。

 対照的な税配分の背景には今ある基地負担に冷淡な一方、新しい基地建設に腐心する政府の姿勢が重なる。そうした偏った政策の下で一時の再編交付金を受け取った先に待つのは、恒久的な基地負担に耐える生活の連続だろう。

 政府は、新たな特措法案を、早ければ秋の臨時国会に提出したいとする。限りなく恣意的な運用が可能で、10年前の成立時も批判の多かった特措法を点検するよい機会だ。対象拡大はもちろん、法の是非を厳しく問うべきだ。