くも膜下出血や脳動脈瘤(りゅう)など「脳血管障害」のスペシャリストとして年間約400件もの手術を手掛ける。特にカテーテルやワイヤを用いた繊細な脳血管内治療に定評があり、“神の手”を求めて全国から患者が訪れる。「髪の毛数本分の血管が詰まるだけで半身不随になる世界。常に冷静さと注意深さを持ち合わせていたい」と過酷な医療の最前線で病魔と対峙(たいじ)する。

脳神経外科医として多くの手術をこなす比嘉さん。手技は「神の手」とも評される=都内の東京労災病院

 幼少期は、採集した昆虫を観察したり、プラモデル作りに没頭したり。手先が器用な少年だった。中高は神奈川の学校に進学。夏休みに帰省するたび、産婦人科医として人のために奔走する父の背中を見て、医師への憧れを抱いた。

 東京医大を卒業。「細かい作業が好きで、人体をつかさどる脳に興味があった」と脳神経外科の道へ。東京女子医大病院や数々の医療機関で経験を積む中で、当時まだ新しかった脳血管内治療と出会った。

 足の付け根や腕からカテーテルを挿入する手法は、開頭手術に比べて患者の負担は少ない。だが「一歩間違えると大事故につながる」だけに、より繊細な技術と経験が求められる。東京労災病院に移ってから同院の手術件数は倍増した。患者との信頼関係はもちろん、他の医師からも信頼されるよう心掛ける。病院スタッフも「常に会話を重視してくれ、相談しやすい」と信頼は厚い。

 脳動脈瘤は位置や大きさにもよるが、破裂すると3分の1が死に至り、回復しても重い後遺症につながる。「機材も進化し、細部まで発見できる。健康診断でも脳の状態を気にかけて」と呼び掛ける。

 日々の緊張を和らげるのはジョギング。郷里で開かれるハーフマラソン大会が楽しみという。「退院した患者さんが元気でいてくれることが、仕事のやりがい」と胸を張った。(小笠原大介東京通信員)

(ひが たかし)1965年名護市生まれ 東江小から泊小(那覇市)に転校し、神奈川の桐蔭学園中学、高校に進学。東京医大卒業後、東京女子医大脳神経外科に入局。脳血管障害のスペシャリスト。2013年から東京労災病院脳神経外科に常勤、15年からは同病院脳神経外科部長。