名曲「童神」は1997年、古謝美佐子さんが初孫誕生の喜びと、娘への感謝を込めて作った歌だ。初めて生で聴いたのは2003年、宜野湾市主催の人権講演会だった

▼ハンセン病回復者・金城幸子さんの講演後、登場した古謝さんは2番で声を詰まらせ、しばし歌えなくなった。妊娠したハンセン病患者が国に堕胎を強制されたこと、胎児の亡きがらを沖縄愛楽園の砂浜に埋めたことなど、金城さんの語りと重なったためだ

▼「この曲で泣いたのは初めて。産むことを許されず、つらかっただろうな、本当に悔しかっただろうなって思ったら…」

▼東日本大震災後は、3番がしばらく歌えなくなった。「風よけになってわが子を守りたい」という意味の歌詞が、震災で子を失った親の悲しみと重なったという

▼元米兵の暴行殺人事件に抗議する19日の県民大会で、古謝さんは被害女性や米軍による事件・事故の犠牲者全てに「童神」をささげた。「私は全ての命に歌うよ。しなやかに、ぐさっと刺すように」。歌い終えた目に涙があふれた

▼沖縄は2日後、「慰霊の日」を迎える。30日は、小学生ら18人が犠牲になった宮森小への米軍機墜落から57年の追悼式がある。死ななくてよかったはずの命に、人々はことしも無念な思いで手を合わせる。戦後71年、命を慈しむ「童神」がいつもより深く響く。(磯野直)