広い屋敷に、ぽつんとあった掘っ立て小屋。沖縄戦で一家が全滅したという重い事実を、そのたたずまいは突きつけていた

 ▼若い頃に取材したことのあるその小屋が無くなったことを、最近知った。そこだけ時間が止まって、見る者に無言で訴え掛けるすごみのある空間だった。無ければ、ごく普通の静かな集落の雰囲気を醸し出すが、小屋はまぶたから消えない

 ▼家庭での記憶は33回忌。法要の途中で、いつもは静かな叔母が突然、号泣した。小学生にとって、はるか遠い過去の話だと思っていた戦が、今とつながっているのだと、おぼろげに伝わってきた

 ▼さらにさかのぼると、体験者の講演を初めて聞いたのも小学校。図書館担当のきれいな先生は、ひめゆり学徒だった。体育館で壇上に上がった宮城喜久子先生(享年86)の表情はいつもと違い、こわばっていた。こちらまで緊張して聞き入った

 ▼きょう執り行われる全戦没者追悼式で、金武小6年の仲間里咲さん(11)が平和の詩を朗読する。今は亡き祖父が、戦中に海軍にいて被弾したとつぶやいた瞬間を捉えて詩を紡いだ。親族から、あの戦が過去のものではないと聞ける最後の世代かもしれない

 ▼沖縄戦の継承が問われて久しい。戦没者の無念と、戦を生き抜いた体験者の辛苦を思えば、やらねばならないことは多々ある。(与那嶺一枝)