沖縄の人々の積もり積もった感情、政府の基地政策に対する不信感、戦争への危機感が、さまざまな形であふれ出した一日だった。

 慰霊の日の23日、糸満市摩文仁の県平和祈念公園で開かれた沖縄全戦没者追悼式。翁長雄志知事は「平和宣言」を読み上げ、こう言った。

 「この悲惨な戦争の体験こそが、平和を希求する沖縄の心の原点であります」

 糸満市米須の「魂魄(こんぱく)の塔」で、摩文仁の「平和の礎」で、この日、多くの人たちが口にしたのも「平和の大切さ」「命の尊さ」だった。

 これを単なるお題目や決まり文句と受け取ってはならない。戦争の足音を聞き取って強い不安を感じ、「戦争やならん」と拒否反応を示しているのである。

 翁長知事は元米兵による女性暴行殺人事件を強く非難し、「広大な米軍基地があるがゆえに、長年にわたり事件・事故が繰り返されてきた」と指摘した。

 米軍普天間飛行場の辺野古移設についても、安倍晋三首相本人を前にして、「これを唯一の解決策とする考えは到底許容できるものではない」と痛烈に批判した。

 知事だけではない。県遺族連合会の宮城篤正会長も「新たな基地建設には遺族として断固反対する」と述べ、「われわれ遺族の戦争と基地に対する強い思いを心にとめ置いて国政にあたること」を安倍首相に求めた。

 喜納昌春県議会議長を含め沖縄側代表がそろって、政策転換を強く求めたのだ。その意味は極めて重い。

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 暴行事件の被害者を追悼する19日の県民大会で、参加した6万5千人(主催者発表)の人々は、「怒りは限界を超えた」というメッセージボードを一斉に頭上に掲げ、事件に抗議した。

 参院選が公示されたこともあって、この問題に触れないわけにはいかなかったのだろう。安倍首相もあいさつで元米兵による暴行殺人事件にふれ、「二度とこうした痛ましい犯罪が起きないよう、対策を早急に講じる」と語った。

 翁長知事の平和宣言に対しては、会場の内外から大きな拍手が起きたが、安倍首相のあいさつに対する拍手はいたって少なく、寒々としていた。この違いの大きさは、基地政策に対する県民の不信感の根深さを示すものだ。

 政府がこの事実に正面から向き合い、県との対話を通して政策転換に踏み出すことを強く求めたい。この機会を逃がしてはならない。

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 「魂魄の塔」は、まんじゅうを二段重ねしたような、古い石積みの慰霊の塔である。その芝を敷いた面に23日、小さな枕ぐらいの大きさの氷が供えられていた。

 亡くなった人をしのび、暑さを思いやって、遺族が置いたのだろう。

 この心ばえが「沖縄のチムグクル」なのだと思う。

 亡くなった人への哀悼の気持ちは、二度と悲劇を繰り返してはならないという戦争否定・平和希求の心情と一対のものである。これこそが次代に引き継ぐべき「沖縄のチムグクル」である。