英国民は欧州連合(EU、28カ国)からの離脱を選択した。「地域統合」の象徴だったEUから加盟国が離脱するのは、1993年に発足して以来初めてである。

 EU離脱の衝撃波は瞬く間に世界を駆け巡った。残留派を率い、国民投票を実施したキャメロン首相は「敗北」の責任を取り、10月までに辞任すると表明した。

 世界の金融市場は大揺れとなり、英ポンドは対ドルで記録的安値となった。円相場も約2年7カ月ぶりに1ドル=99円台を付け、日経平均株価は一時1300円安となった。

 急激な円高株安が続けば安倍政権の経済政策アベノミクスにも大きな影響を与えるのは確実だ。

 離脱か残留かを巡って争われた英国民投票は、離脱支持が過半数を占めた。最終得票率は離脱支持51・89%、残留支持48・11%と国民世論を真っ二つに分断した。

 英国が2015年に輸入したモノとサービスの約53%はEUから、輸出も約44%がEU向けである。EUなしでは経済活動は成り立たない。にもかかわらず、なぜEUからの離脱を選択したのか。

 EUは域内の「移動の自由」を認めており、東欧などから英国への移民が急増している。離脱派は移民によって英国民が職を奪われ、賃金水準の低下を招いている、と主張。EUから離脱すればEUの規制に縛られることなく移民を制限し、主権を取り戻すことができる、と訴えた。

 英国民は経済的恩恵より移民流入などEUへの不満を意思表示したといえよう。

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 英国はEU第2位の経済大国で、国内総生産(GDP)は全体の約18%を占める。その英国が離脱すれば、EUの求心力が低下するのは避けられない。

 世界経済だけでなく、政治的影響もすでに国内をはじめ欧州全土に広がっている。14年に独立を巡り住民投票をしたばかりのスコットランドでは、今回の結果を受けて再び住民投票を求める動きが表面化している。

 ギリシャなどの債務問題や中東からの難民流入などでEUに対する懐疑的な見方は英国だけではない。

 フランスの極右政党、国民戦線の党首は英国のEU離脱を支持、17年の大統領選で当選すれば同様の国民投票をすると言っている。オランダ、オーストリア、ドイツでも離脱を訴える極右政党が勢いづいている。英国のEU離脱を巡るこうした動きが米大統領選にも影響しそうだ。

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 EUの源流は1952年発足の欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)にさかのぼる。

 独仏対立の火種になっていた石炭、鉄鋼を共同管理、その後三つの機関を統合して欧州共同体(EC)ができた。EUの前身である。

 EUの発足は20世紀に二つの世界大戦を経験した欧州の人々にとって「欧州は一つ」という夢の実現でもあった。

 英国のEU離脱が引き金になって「離脱ドミノ」が現実化すれば世界は混迷を深め、極めて不安定な状態に陥る。関係国は危機回避のため全力を尽くしてもらいたい。