民主(現・民進)と自民、公明の3党は2012年に「社会保障と税の一体改革」に合意した。消費増税によって財源を確保し、社会保障制度を維持・充実させ、財政の健全化を図る、という構想だ。

 安倍晋三首相は、二度にわたって、しかも選挙直前に、消費増税の延期を表明。17年4月に予定されていた増税(8%↓10%)は19年10月まで先送りされた。その時点で増税が実現するかどうかも定かではない。

 「社会保障と税の一体改革」は事実上、崩壊した。参院選では何よりもそのことが問われるべきだが、そうはなっていない。多くの有権者は消費増税の再延期を歓迎しており、それを見越してどの党も消費増税の先送り、中止などを公約に掲げたからだ。

 だが、経済の先行きが不透明なうえ社会保障制度の将来像が示されないため、将来不安は募る一方である。

 将来不安が解消されなければ個人消費は回復せず、消費が戻らなければ社会保障財源の確保も難しくなる。

 増税実施を前提にして計画していた社会保障策はどうなるのか。必要な財源をどのように確保していくのか。

 安倍政権は税収の上振れ分を財源に充てることを検討しているが、税収の上振れ分は安定せず、恒久財源にはなりにくい。

 「社会保障の充実」という一体改革の政策目標は、政治と選挙に翻弄(ほんろう)され、行き詰まっている。

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 安倍首相は選挙後を見越して、「消費税率10%への引き上げを延期する以上、同じことをすべて行うことはできない」と一部施策の見送りや先送りの可能性を示唆した。

 何を見直し、何を先送りするのか、具体的な話には触れていない。

 消費税率10%への引き上げ時に予定していた社会保障充実策は、対象者が期待を込めて待ちわびているものだ。

 たとえば、国民年金の受給に必要な保険料の納付期間を今の25年から10年に短縮すれば、無年金の高齢者約42万人(07年の厚生労働省推計)のうち約4割が年金を受け取ることができる。

 横浜市青葉区に住む女性は、73歳の今も介護福祉士として1日7時間働いている(26日付本紙3面)。受給資格期間に足りず、まったく年金を受けられないからだ。

 無年金の人を減らすための施策は、憲法が定める最低限度の生活を保障するという意味でも急務である。財源確保のめどがたたず実施が遅れるようでは政治の怠慢だ。

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 年金が少ない低所得の高齢者に月最大5千円の給付金を支給する計画も、5600億円の財源確保のめどがたっていない。

 安倍首相は「アベノミクスを加速させ、税収を増やすことで社会保障を充実させていく」と主張するが、成長頼みの政策には限界がある。

 どの政党も社会保障の将来像を描けておらず、そのことが将来不安を招いているのが現実だ。将来への希望や期待が特定層に偏っているような社会は健全とはいえない。