那覇市出身のボクサーで36歳の翁長吾央は、横浜市の大橋ジムに所属する。世界王者の井上尚弥と八重樫東を擁し、日本で最も勢いがあるジムだ

 ▼翁長は高校3冠などの栄光をひっさげて2003年、沖縄ワールドリングジムからプロデビューした。その後、大橋に移籍するが2度の日本王座挑戦に失敗。ジム内の出世コースから脱落した

 ▼12年、親の看病のため帰郷し、失意の中で汗を流す日々。古巣の沖縄ワールドで練習していると、中真茂会長から「左ストレートの打ち方、忘れているぞ」。器用さゆえ、多くの技術を習得しようとして一番得意なパンチを見失っていた

 ▼大橋に籍を置きながら県内のジムで左を磨き続け、再起後10連勝。そして8月21日、県立武道館で東洋太平洋スーパーフライ級王座への挑戦が決まった。「この4年間、ずっとチャンスを待っていた。こみ上げるものがある」

 ▼勝てば世界への道が開けるが、負ければ年齢的に引退は必至だ。最初に沖縄尚学高ボクシング部で教えた金城眞吉さん(71)は「技術的には申し分ないが、性格が優しい。リングではもっと非情になっていい」とエールを送る

 ▼挫折しかけた時、沖縄の人たちが支えてくれた。ロードワークで感じる故郷の風も背中を押した。勝負に絶対はないが、研ぎ澄ました左が見たい。36歳の意地が見たい。(磯野直)