「上の子が家庭を持つ決断をしました」。本島中部に住む里親の男性は、控えめな口調ながら喜びを隠せない様子だった

▼上が4歳のきょうだいを20年以上前に引き取った。養子縁組の申し出に、子どもたちはまだ自覚がなく判断できないと受けなかった。実子のいない夫妻にとって、またとない話だが、幼児も「一個の人格を持っている」ことをより重んじた

▼男性の妻は「自立できるように」と家事を少しずつ教えた。写真の中で、男の子が小さなエプロンを着けて踏み台に乗り並んで料理をする姿は愛らしく、動きだしそうなくらい自然体だ

▼その妻は男の子が小学生のときに亡くなった。病床にあっても「(養育を)ほかの方にお願いしたら」と父子の行く末に気をもんだ。男性は、また環境が変わる子どもの心の負担を案じ「できるところまで頑張ってみようよ」と親子で話し合い、変わらぬ生活を続けた

▼中学から高校にかけては「ちょっと踏み外して」夜遊びもしたが、必ず家に帰ってきた。社会人になって自立し、男性の願い通り、実母や親戚との交流も続いている

▼男手一つで家族を守り抜き「自分で判断して行動できる子育てをした」自負は引き継がれるだろう。人の持つ温かで優しい関係性と人生を切り開く強さを本欄の執筆最後に届けられたことをうれしく思う。(与那嶺一枝)