衆院での審議入りからわずか20日足らずで、基本的人権にかかわる重要法案を可決するのは、数の力を背景にした暴挙というしかない。

 機密を漏らした公務員らに厳罰を科す特定秘密保護法案が26日、衆院本会議で自民、公明両党とみんなの党の賛成多数で可決された。今国会の成立を目指す安倍政権が、12月6日の会期末をにらみ、衆院通過を強行した。

 国民の約6割が「知る権利」の侵害を懸念する法案だ。与党と日本維新の会、みんなの党の修正案は、政府による恣意(しい)的な秘密指定の拡大など法案の持つ危険性の根幹は何ら変わっていない。

 26日午前の衆院国家安全保障特別委員会で、自民党が質疑を打ち切る緊急動議を提出し、採決を強行。与党とみんなの党の賛成多数で可決した。修正案には問題点が多い。にもかかわらず、十分な審議をつくしたとは、とてもいえない。

 特定秘密の指定期間が30年を超える場合に、内閣の承認が必要とされていたが、修正案では「最長60年」に延びた。さらに「暗号」など例外7項目は、60年を超えて半永久的に秘密指定が可能となるなど、政府原案より後退している。

 第三者機関については、法案の付則に、独立した立場で監視できる機関の「設置検討」を盛り込むが、あくまでも検討でしかない。

 首相の「指揮監督権」を明記し「第三者的」な関与を想定しているが、行政のトップが第三者というのは矛盾している。

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 特定秘密保護法案は、外国の制度と比べても秘密の妥当性チェックの欠陥が顕著だ。

 米国では、国立公文書館内に設置された「情報保全監察局」が、機密指定が適切かどうかをチェックし、指定を解除する権限を持つ。

 米国防総省の元高官は共同通信のインタビューで「政府が持つ情報は国民のものというのが世界の基本原則」と指摘し、「日本はなぜ国際基準から逸脱するのか」と疑問を呈している。

 世界各国の専門家がつくった、情報アクセスの権利に関する「ツワネ原則」は、70カ国、500人以上の安全保障や人権の専門家が2年間にわたる会議を経てことし6月に発表した。秘密の範囲を制限する必要性や監視機関の設置、ジャーナリストや市民を処罰の対象外にする-などを規定している。日本の特定秘密保護法案は、この世界の潮流にも背いているのだ。

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 衆院の特別委員会は25日、福島市で特定秘密保護法案に関する地方公聴会を開いた。与党側が推薦した人も含め7人の陳述人が全員、法案への反対や懸念の考えを示し、慎重審議を求めた。

 それなのに、公聴会翌日に法案を可決するとは、福島の人たちに対する裏切りである。アリバイづくりと批判されても当然だ。

 法案の審議は参院に移る。良識の府といわれる参院で徹底した審議を重ね、やはり廃案にするべきだ。この悪法が成立するなら、将来に禍根を残すことになる。